銀行員「お客様にピッタリの商品です」とグイグイ来るが…投資初心者が知っておくべき〈投資商品購入の重要ポイント〉

銀行員「お客様にピッタリの商品です」とグイグイ来るが…投資初心者が知っておくべき〈投資商品購入の重要ポイント〉
(※写真はイメージです/PIXTA)

インフレなうえにゼロ金利という厳しい状況下、資産形成のために投資を検討する人が増えています。しかし初心者の場合、うっかりするとリスクの高い商品をつかみかねません。どのような点に留意すればいいのでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

服は自分で選んで買うのに、なぜ「金融商品」は販売員任せ?

大人と子どもの大きな違いのひとつに「自分で責任を取れるか否か」があります。

 

もし小さな子どもが赤信号を渡ろうとしたら、大人たちは止めるでしょう。しかし、大人が赤信号を渡ろうとしても、止める人は少ないのではないでしょうか。そこには「大人が赤信号を渡って事故に遭ったところで、自己責任」という意識があるからだと思われます。

 

同様に「投資」も自己責任です。大人は、自分のお金をなにに投資しようと、だれからもなにもいわれませんが、失敗して損をすれば、それは自分の責任です。他人のアドバイスに従って投資したとしても、最終的に投資を決めたのが自分なのですから、損をしたところで、アドバイスしてくれた人が責任を取ってくれるわけではありません。

 

逆にいうと、最後は自分で責任を取るのですから、自分で納得してから投資をする必要があるわけです。他人のいいなりになるのは危険です。

 

洋服を買うとき、店員へアドバイスを求めても、最終的は自分で決定するはずです。それなのに、金融商品を買うときには「金融のことはわからないから、プロである金融機関の担当者のアドバイスに従う」という人も多いのです。

 

しかし、彼らはプロであると同時に販売員です。客の利益を第一に考えるとは限りません。もしかしたら「手数料の高い商品を売る」というノルマを課されているかもしれないのです。

 

もしそうなら「お客様にピッタリの商品です」という言葉は「当店の利益率がいちばん高い商品です」という意味になるかもしれません。「いちばん売れています」は「利益率が高い商品を店員たちが熱心に勧めた結果、売上が伸びています」という意味かもしれないのです。

理解できない商品には手を出さないで

単に手数料が高いだけならばまだマシですが、リスクの高い商品を売りつけられたら大変です。

 

「ノーベル経済学賞の受賞者が考案した投資商品で、高度な数学を駆使した画期的なものです」といわれれば、買いたくなるかもしれませんが、買い手にどんなリスクがあるのか理解できなければ買うべきではありません。

 

理屈が理解できるものであっても、たとえば「高い金利を払う社債ですが、トヨタの株価が半分になったら満期に現金ではなくトヨタの株券を渡します」といったものは買うべきではないでしょう。一般人にはトヨタの株価が半分になる確率が理解できないと思われるからです。

 

リスクに加えて、コストも問題です。こうした商品は、プロが設定している「隠れ手数料」が買い手から見えないので、高い手数料が組み込まれている可能性が高いと考えた方がよいでしょう。

相手のインセンティブを考えてみよう

複数の保険会社の商品を比較して顧客に最も適したものを紹介する、という会社があります。保険会社に相談しに行くと自社の商品を売りつけようとされるので、そうした会社に相談した方が安心だと思う人も多いようです。

 

しかし、相手のインセンティブを考えてみましょう。無料で相談に乗ってくれるのはなぜでしょうか? 社員の給料をどうやって稼いでいるのでしょうか? 容易に想像がつくのは、顧客が保険商品を買うたびに保険会社から謝礼がもらえるのだろう、ということですね。

 

そうだとすると、彼らが「いちばん高い謝礼を払ってくれそうな保険会社の商品を顧客に紹介する」インセンティブを持っていると考えるのが自然でしょう。それは顧客にとっていちばん不利な会社かもしれません。

 

会社ではなく、FP(ファイナンシャルプランナー)と呼ばれる人々についても、同様のことがいえるかもしれません。

 

そうした懸念を避けるためには、「顧客から相談料を受け取る代わり、顧客に金融商品を売らない」と宣言しているFPに相談してみる、というのも選択肢です。相談料はかかりますが、それを払うことによって「タダほど高いものはない」といった経験をせずにすむかもしれませんから。

「自分で決めない」という意思決定も選択肢

投資初心者にとって、どんな金融商品をいつ買うべきかを判断することはむずかしいでしょうが「プロに相談するのもリスクがあるし、手間も面倒だ」という場合には、自分で決めずにすむ選択肢もあります。

 

どの銘柄を買うかわからなければ、全部の銘柄を少しずつ買えばいいですし、いつ買ったらいいかわからなかったら、毎月少しずつ買えばいいのです。具体的には、投資信託を毎月一定額、積立投資するのです。投資信託であれば、多くの銘柄の株式を少しずつ買ったのと同じことですし、毎月買うのであれば、高いときも安いときも買うことになるので、平均的な値段で買うことができるでしょう。

 

数ある投資信託の中でどれを選ぶかですが、積立NISAの対象商品であれば、金融庁が顧客本位の観点から厳選したものですから、手数料が高いものを売りつけられる心配はありません。

 

筆者としては、日本や米国でインフレになっても困らないように米国株の投資信託を買うのがよいと考えていますが、決めるのは読者ご自身です。投資は自己責任ですから。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、わかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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