(※画像はイメージです/PIXTA)

富裕層の間で「相続税対策」として人気があった「タワーマンション節税(タワマン節税)」について、国税庁は10月12日までに、マンションの相続税評価額の算定方法の新ルールを定めた「通達」を公表しました。これにより、タワマン節税のメリットは大きく損なわれることになりました。新ルールの内容について、税理士の黒瀧泰介氏(税理士法人グランサーズ共同代表)が、これまでの経緯にも触れながら分かりやすく解説します。

「タワマン節税」とは

まず、前提として、タワマン節税がどんなしくみだったか、概要をおさらいしておきましょう。タワマン節税は、タワマンの「高層階」の相続税評価額が、実際の市場価格(実勢価格)と比べて著しく低いことに着目して、相続税を抑えるスキームです。

 

もともと、不動産(土地と建物)の相続税評価額は、以下のように、市場価格よりも低く抑えられています。

 

【不動産の相続税評価額】

・土地:路線価(市場価格の80%程度) ※路線価がない土地は「倍率方式」

・建物:固定資産税評価額(市場価格の70%程度)

 

その趣旨は、不動産は「生活する場所」だったり、「生活の糧を得るための事業を行う場所」だったりするので、相続税の負担を軽くすべきだということにあります。

 

そして、とりわけタワマンの高層階については、それに加え、さらに相続税評価額が低く抑えられるという特殊性がありました。すなわち、マンションの相続税評価額は住戸ごとにそれぞれ「土地」と「建物」に分けて計算されますが、従来は以下のような特徴がありました。

 

【マンションの相続税評価額の特徴(従来)】

・土地:1住戸あたりの敷地の面積が狭く、一戸建てより相続税評価額が低い(「小規模宅地等の特例」を利用すればさらに評価額が下がる)

・建物:高層階ほど市場価格が跳ね上がり、相続税評価額との乖離が大きくなる

 

2017年以前は、土地、建物のいずれについても、建物の価格を床面積に応じて均等に割り振る計算方法を用いていたので、タワマンの高層階の住戸は評価額が市場価格と大きく乖離してしまうという実態がありました。それが「タワマン節税」に利用されてきたのです。

 

以下は、マンションの市場価格と相続税評価額の乖離の実例です。

 

国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」資料P6より
【図表】マンションの市場価格と相続税評価額の乖離の事例 国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」報道発表資料(2023年1月31日)より作成

 

これに対し、国税庁はルール変更を行いました。すなわち、2018年以降に引き渡される新築物件については、以下の計算式を用いて、上の階にいくほど評価額が高くなるようにしたのです。

 

【2018年以降の評価額の計算方法(2023年末まで)】

1階の評価額+0.25%×(階数-1)

 

しかし、これでもまだ、市場価格との乖離は相当程度大きく、解消されませんでした。タワマン節税にはなお妙味があり、依然として富裕層の有効な相続税対策であることに変わりはありませんでした。そこで、今回の通達により新ルールが設けられたということです。

 

 \1月20日(火)ライブ配信/
調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

次ページ国税庁が通達で定めた「新ルール」の内容
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