富裕層が“あえて”生命保険に入るワケ
ときどき、ファイナンシャルプランナーなどお金の専門家から、「保険は無駄だ」といった話が聞かれます。
たしかに日本は公的医療保険が充実しており、死亡率も高くはありません。そう考えれば、民間の高い保険料を払うより、投資などにお金を回すほうが合理的といえそうです。
ましてや高齢の富裕層であれば、亡くなったとして家族が金銭的に困ることはありません。すでに子どもは独立していますし、残された配偶者の生活を守るくらいは簡単です。
ところが現実には、富裕層のほとんどが、なんらかの生命保険に加入しています。なぜなら、富裕層ではない人にとっての保険と、富裕層の人にとっての保険は目的が違うからです。
私もそうですが、一般に保険は「生活の保障」のためのものです。死亡保険であれば、自分が死んだ後、残された家族の生活を守るために入ります。
でも、すでに億単位の資産をもっている富裕層の場合、わざわざ死亡保険に入らなくても、家族の生活は十分に守れるはず。ですから、保険料を払うのは一見すると無駄遣いのように思えますが、そうではありません。彼らは、相続税と遺産分割への対策として、生命保険を活用しているのです。
生命保険が「相続税節税」になるカラクリ
令和2(2020)年分の相続税の統計資料を見ると、亡くなった被相続人1人あたりの平均で約1,827万円の生命保険金等が計上されています。
亡くなった被相続人が保険料を払っていた場合、保険金を受けとった人に相続税がかかります。ただ、この生命保険金については、「法定相続人1人あたり500万円」の非課税枠が設けられていますから相続税の節税になるのです。
たとえば、妻と子2人の計3人が相続人というケースを考えてみましょう。非課税枠は、500万円×3人=1,500万円となり、合計1,500万円以内の保険金であれば、相続税は一切かかりません。ちなみに私が相続税調査をしていた頃は、法定相続人1人あたり1,000万円の非課税枠が認められていたので、今より生命保険の節税効果が高かったです。
亡くなった被相続人が現金のままで財産を残したら、全額が相続税の対象となります。ところが保険料を払えば相続税の対象となる現金を減らせるうえ、受けとれる保険金に非課税枠が使えるので、簡単に相続税を節税できるのです。
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