「水」に翻弄された2023年夏の中国
2023年の夏もさまざまなことが起きた中国。今夏を漢字1文字で表すと、ズバリ「水」だ。水と戦い、水に怒り、水に逃げられ……なんとも忙しい日々だった。
7月末~8月に中国北部を襲った「北京豪雨」
7月下旬、スマホ動画で北京市郊外の豪雨・洪水の光景を見て思わず息をのんだ。濁流が街を飲み込み、車や家財が流れていく。房山区では、駐車中のEVバスが何十台も浸水でドボン。紫禁城(故宮)も過去600年で初めて冠水した。
お隣の河北省涿州市も広範囲にわたって浸水した。三国志の「桃園結義(桃園の誓い)」の舞台として知られるこの街では、一部の水位が4メートルに達したという。
河川増水による洪水を防ぐため、堤防の一部が壊されて水が流入したらしい。遊水地として「首都防衛」の役割を果たしたわけだ。近くには国家プロジェクトで開発中の「雄安新区」もある。
9月頭、深セン・香港で大規模な冠水
9月7日から8日にかけては深センや香港で大規模な冠水が報告された。香港では1時間158ミリという1884年以来最大の豪雨となり、ショッピングモールや地下鉄駅には汚泥が流れ込んだ。
深センも各地で浸水・冠水が相次いだ。私の知り合いは車を運転中に雨で身動きが取れなくなり、命の危険を感じて急いで脱出。数分後、彼の愛車のテスラは、無情にも屋根まで水没してしまったという。
福島原発の処理水放出で起こった「日本バッシング」は意外にも“数日で立ち消え”
水といえば、福島第一原発のALPS処理水放出も大きな話題になった。8月24日の放出後の数日間は激しい日本バッシング。事実に基づかないデマやフェイクの類のショート動画が多数出回り、あたかも事実のように拡散された。
なんともやるせない気持ちになったが、在留邦人はこういう時は息をひそめてじっと耐えるほかない。
数日後、ネットの話題はいつの間にかバスケW杯での日本チームの活躍ぶり(&中国チームの不甲斐なさ)に移っていた。9月上旬に話を聞いた上海人曰く、「心配する人はいるけど、会社ではもう話題にも上らない」。