外資系企業の働き方や人事制度について、日系企業のような「上司へのゴマすり」は通用しない「ドライ」なイメージを抱く人は多いのではないでしょうか。しかし実際には、万国共通で「ボスに気に入られる」ことが出世のポイントになるようです。本稿では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、外資系企業の日本法人でトップに登り詰める人の特徴や、出世する人の共通点について解説します。
「上司へのゴマすり」は万国共通か…外資系企業の日本法人で〈出世する人〉の“意外な特徴”【転職のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

外資系企業の日本法人社長…実際には、“営業所長”?

外資系企業で日本法人の社長や役員になると、その肩書やイメージが先行して、「バリバリのエグゼクティブ」だと思われることが多いようです。

 

しかし実は、外資系企業の日本法人の社長の大半は、“営業所長”に近いポジションです。どういうことかというと、日本営業所、すなわち外資系企業の日本法人には、日本市場におけるセールス&マーケティング(場合によってはセールスのみ)の役割が期待されていて、営業活動に特化した位置づけになっているということが珍しくないのです。

 

先ほど列挙したような大規模な会社、たとえばコカ・コーラのように『いろはす』や『綾鷹』など、日本で日本人を対象に買ってもらえる商品を開発し、日本市場で独自に動いているような企業が存在していることも事実です。しかし大半の外資系企業は、バックオフィスの要員を除いて大半が営業担当だけで運営されています。

 

企画や広告、販促活動などは本国で行われ、「日本ではこういう風に売りなさい」という指示だけが下されます。人材採用についても、必要な人員を採用する関連予算は本国に紐づいており、本国がすべての承認を行って日本支社にはまったく権限がないということも珍しくありません。

 

具体的にいえば、日本支社の社長が承認した後で上長(例えばアジア・パシフィック地域の責任者、場合によっては本国の責任者)が最終面接を英語で行うような例もあり、日本支社の社長といえども採用の最終決済権を持っていないケースが半数以上です。最近はシンガポールや中国にアジア地域のトップが置かれる事例も増えています。

 

すなわち、日本支社の社長の上司はアジア・パシフィック(日本もアジア・パシフィックですが)のリージョントップということなり、日本支社の社長は中間管理職と言っても過言ではないということです。

 

そうした現地化(ローカライズ)の実態を紐解くと、本国がガチガチに決裁権を握り、それをまったく委譲しようとしない傾向にあります。悪口をいうわけではありませんが、筆者が見渡したところ、フランスに本社を置く企業にこの傾向が強い気がします。これはお国柄ということかもしれません。

 

また日本で稼いだ収益は、日本支社の運営資金の最低限度額を残してすべて本国に送金するよう義務付けられているケースが大半です。まさに日本支社は営業所的な位置付けに近いということです。

 

ということで、外資系企業の日本支社で社長に登り詰めた人のバックグラウンドは、十人十色、千差万別ではあるものの、数の比率をみる限りは「バリバリの営業上がり」が大半を占めているのです。