社員の人件費の「内訳」を知る
経営層へのキャリアアップが容易でないことは、誰にでも想像できるはずです。
筆者のところにくる相談者のなかにも、その厳しい状況を感じ取ってか、CXOへのステップアップについて、初めから弱気になってしまっている人は珍しくありません。すでに部長級で活躍している人であればまだしも、それらのポジションでの経験がない若いビジネスパーソンであれば、「経営層へのステップアップ」は、雲の上の話に聞こえるでしょう。
そこで今回は、頭の中ではぼんやりと「経営層へのステップアップ」を意識しつつも、なにから始めたらいいのか、想像すらできないという若いビジネスパーソンの目線で解説をしていきます。
まだまだ遠い未来である10年先、15年先の仕事のイメージがどうしても持てない場合、まず取るべきスタンスは、「目の前のことに集中する」という一点に尽きます。具体的にいうと、「常に年収の3倍のパフォーマンスを発揮する」ことにのみ、強いこだわりを持つことです。
「年収の3倍のパフォーマンス」については、人事の世界では広く語られることですが、いつどこで誰が言い始めたことなのかはわかりません。しかし、経営管理を数値化して、経理や財務の観点から眺めてみると、なんとなくつじつまの合う計算になっているというのが筆者の実感です。
年収500万円の会社員を例に挙げてみます。
会社は、社員を雇うにあたって給与以外にもかなりの経費を負担しています。たとえば、その社員の社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金など)。これは会社と従業員で折半して負担することになっています。従業員は、受け取った給与から追加でこれを負担することはありませんが、会社負担分は追加で発生します。
また、労災保険や雇用保険などの労働保険についても、会社は社員の給与に上乗せする形で負担しており、これに福利厚生に関する費用や通勤に必要な交通費を加えると、会社は、社員の年収の15%ほどのコストを追加で負担していることになります。
すると、年収500万円の社員に対して会社の追加負担は最低でも75万円(500万円×15%)。ここに挙げた以外にも、会社が負担している費用はいくつもありますから、社員一人当たりのコストはもう少し増えて、給与+その20~30%程度になるケースが多いようです。
仮に、会社負担を最低の15%として、どれくらいの粗利益が必要なのか考えてみましょう。
必要粗利益は「人件費÷労働分配率」で求められます。
労働分配率とは、企業が生み出した付加価値をどれほどの割合で人件費に分配するのかを示す指標です。社員の年収が500万円の場合、会社が負担する人件費は上にみたとおり最低575万円。つまり、仮に労働分配率が60%の会社が年収500万円の人を雇う場合、人件費の575万円÷労働分配率60%で、必要粗利益は959万円ということになります。