「一生苦労させません」誓いの言葉に裏切られ…退職後〈貯金3,700万円〉で豪遊した66歳夫逝去。残りの貯金40万円で精一杯の寂しいお葬式をした妻、貯金ゼロの恐怖老後がスタート【FPが解説】

「一生苦労させません」誓いの言葉に裏切られ…退職後〈貯金3,700万円〉で豪遊した66歳夫逝去。残りの貯金40万円で精一杯の寂しいお葬式をした妻、貯金ゼロの恐怖老後がスタート【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本人の平均寿命は男性が81歳、女性は87歳です。夫と年齢が近い場合、悲しいことに夫が先立つ可能性のほうが高いのが現状です。そのようななか、年金受給者は自分の死後、残された配偶者が受け取れる遺族年金額を前もって把握し、計画を立てておくことが重要になってきます。本記事では、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が、Cさんの事例とともに、残される配偶者のために生前、備えておくべき5つの対策について解説します。

妻の今後の収入は「生活保護」と同水準

妻Cさんの今後の収入は公的年金のみです。月あたりの内訳は次のとおりです。

 

老齢基礎年金 6万4,000円

遺族厚生年金 6万円 

月あたり 約12万4,000円

※遺族厚生年金は一生受給できる

 

毎月約12万円の収入で生活していくことは可能でしょうか。この金額は生活保護の生活扶助+住宅扶助の合計と同水準です。最低限の生活として想定されている生活費だということです。実際には妻のCさんにとっては生活費以外の支出が多く想定されています。

 

娘2人に付き添われ、ファイナンシャルプランナー事務所で今後の収支をシミュレーションしてみました。

 

頼みの綱「自宅」も、旗竿地で売却は困難

夫の実家でもあった自宅は築50年であり、屋根外壁の修繕、防蟻処理、頻繁な水回りの修繕、固定資産税、火災保険などの維持費がかかります。この自宅を売却し、サービス付き高齢者向け住宅に引っ越すことを検討しましたが、自宅の立地に問題があり売却はほぼ不可能だとわかりました。

 

自宅の敷地は旗竿地であり、接道している部分の幅が約1.5mしかありません。この土地を誰かが買っても建物を建築する許可はおりません。考えられるのは通路部分に接した向かいの家に購入してもらうことですが、住人はすでに高齢者で相続人もいなく、土地を広げるつもりはないとのことで断られてしまいました。

 

老後資金のために自宅を活用した「リースバック」「リバースモーゲージ」の制度もありますが、この敷地では対象外となります。

 

Cさんがあと20年この建物に住めるかどうかも不安です。台風などで損壊したときのために安い火災共済には加入していますが、時価での保障であるため、新しい家を再建できるほどの保険金はありません。そうなると、Cさんは住みかを失ってしまいます。

 

自宅の維持費以外にも、自動車の維持と買替え、墓の管理費、Cさん自身の入院保険、町内会費、日々の病院通院費、そして将来的に介護費用が待ち構えています。コロナ禍以降の物価上昇も問題です。

 

夫のAさんが厚生年金に加入していたため、遺族厚生年金が生涯もらえるのは恵まれています。しかし、基礎年金と遺族厚生年金だけでは、妻のCさんの生活の成立は厳しいものとなりそうです。

 

話し合いの結果、長女が自宅の税金や火災保険、修繕などの維持費を引き受けてくれることになりました。次女は夫が経営していたカフェがコロナ禍で廃業してしまったため、母親を支援することは現時点で難しいということに。

 

妻Cさんが亡くなったあとで売却が困難な自宅敷地をどうするのかは、いまから時間をかけて対策を考えていくことになりました。

 

数年前までは潤沢な金融資産があり、夫がゴルフ三昧で遊んでいたことを想うと、妻の困窮ぶりは別世界のように感じます。ですが、もし夫が浪費せず、詐欺被害に遭っていなかったら妻は安泰だったのかというと、必ずしもそうは言い切れません。特に専業主婦を続けてきた妻の場合、自身の年金は基礎年金のみであるため遺族厚生年金と合わせても非常に心許なくなります。

 

夫が亡くなったあと、妻には金融資産をいくら残すべきなのか計算しておくべきです。それが金融資産で叶わないのであれば生命保険を残すほかありません。しかし高齢となってからは掛け金が高く加入は容易ではありません。なるべく若いうちに、妻が1人で残されることを想定して事前に対策を取っておく必要があります。

 

 

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