「経済学賞」の賞金だけが課税対象…なぜ?
これらに対し、「経済学賞」だけは扱いが異なります。前述のとおり、所得税法9条13号ホは「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」について非課税としています。しかし、経済学賞の賞金はスウェーデン国立銀行が独自に支払うものなので、この条項の対象とならず、所得税等が課税されるのです。
となると、経済学賞の賞金は所得税法上、「一時所得」に該当します。一時所得は以下の条件をみたす所得をいいます。
【所得税法34条1項】
「一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。」
細かな税法理論上の問題については立ち入りませんが、現状、ノーベル経済学賞の賞金が一時所得に該当するという結論には争いがありません。
一時所得の課税対象額は、以下の通りです。
【一時所得の課税対象額】
(収入金額-収入を得るために支出した金額-50万円)×2分の1
ノーベル経済学賞の賞金の場合、その性質上、「収入を得るために支出した金額」というのは考えにくいので、以下の額になるとみられます。
この金額と他の所得を合計して、税率をかけたものが、税金の額となります。7,475万円は所得税の最高税率45%(控除額479万6,000円)なので、仮に他の所得がなかったとしても、所得税額は
ということになります。いくら運営母体が異なるとはいえ、授賞式等の扱いも賞としての権威も「生理学・医学賞」「物理学賞」「化学賞」「文学賞」「平和賞」と変わらないのに、いかにも不公平ではないか、とも考えられます。
ただし、今まで日本人でノーベル経済学賞を受賞した人はいません。所得税法上、非課税所得として扱われず、とりたてて問題視もされていないのは、単にこれまで受賞者がいないからという事情が大きいと考えられます。
ここで思い出していただきたいのですが、ノーベル賞の賞金が非課税となったのは、1949年に湯川秀樹博士がノーベル物理学賞を受賞したのがきっかけです。そのとき、ノーベル経済学賞は存在すらしませんでした。
今後もし、日本人のノーベル経済学賞受賞者が現れたら、1949年の湯川博士のときと同様、非課税にすべきということになり、法改正が行われる可能性があります。2023年のノーベル経済学賞の受賞者は10月9日(月)に発表されます。はたして、日本人初のノーベル経済学賞の受賞者が現れるのか、注目されます。
黒瀧 泰介
税理士法人グランサーズ 共同代表
公認会計士
税理士
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