(※画像はイメージです/PIXTA)

ノーベル賞の受賞者の発表が日本時間の10月2日18:30頃から始まります。日本人にも有力候補者と目される方がいて、注目されます。2023年のノーベル賞の受賞者には賞金1,100万スウェーデン・クローナ(約1億5,000万円)が授与されることになっています。この賞金には、所得税はどれくらいかかるのでしょうか。税理士・黒瀧泰介氏(税理士法人グランサーズ共同代表)が解説します。

ノーベル賞と「賞金」の額

ノーベル賞の賞金がわが国の税制上どう扱われるかは、実は、一定ではありません。そこで、前提として、まず、ノーベル賞とその賞金について簡単におさらいしておきましょう。

 

ノーベル賞は1901年にスウェーデンの化学者・実業家でダイナマイトの発明者であるアルフレッド・ノーベルの遺言によって始まった賞です。ノーベル財団が運営し、「生理学・医学賞」「物理学賞」「化学賞」「文学賞」「平和賞」の5つがあります。これに加え、スウェーデン国立銀行が「経済学賞」を創設し、1969年から授賞が始まっています。

 

このうち「経済学賞」はノーベルの遺言にはなく、スウェーデン国立銀行が独自に創設し、運営しているものです。運営母体は異なりますが、選考を行うのは「物理学賞」「化学賞」と同じスウェーデン王立科学アカデミーです。授賞式や晩餐会、舞踏会等も、同じ扱いです。

 

ノーベル賞の受賞者には賞金が授与され、2023年の賞金額は1,100万スウェーデン・クローナ(約1億5,000万円)です。経済学賞も同額です。同じ賞を複数の人が受賞したら、頭数で分け合います。

 

ノーベル賞の日本人の受賞者はこれまで合計28人です。最初の受賞者は「中間子論」で1949年に物理学賞を受賞した湯川秀樹博士です。経済学賞のみ受賞者がいません。

 

以上を前提に、ノーベル賞の賞金が日本の税制上どう扱われているのか、説明します。前述したように、ノーベル賞には創設当時からある「生理学・医学賞」「物理学賞」「化学賞」「文学賞」「平和賞」と、「経済学賞」とで運営母体が異なります。実は、このことが、ややこしいことに税制上の扱いの違いを生んでいます。

「生理学・医学賞」「物理学賞」「化学賞」「文学賞」「平和賞」は非課税

まず、ノーベル財団が主催する「生理学・医学賞」「物理学賞」「化学賞」「文学賞」「平和賞」の賞金は、非課税です。所得税法9条13号ホは、以下の所得について「非課税所得」として「所得税を課さない」としています。

 

【所得税法9条13号ホ】

「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」

 

ノーベル基金は、ノーベル賞の運営母体であるノーベル財団が株式や国債、不動産等で運用しており、ノーベル賞の財源です。そこから授与される賞金を「非課税所得」としているのです。したがって、税金は1円もかかりません。

 

これは、1949年に湯川秀樹博士が日本人として初めてノーベル物理学賞を受賞した際に、賞金に課税すべきではないのではないか、という議論が起き、法律が改正されたものです。

 

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