“組織図”で判明…アップルが〈絶対的な企業ブランド〉を維持できる理由【専門家が解説】

“組織図”で判明…アップルが〈絶対的な企業ブランド〉を維持できる理由【専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

圧倒的なブランド力と事業競争力を維持し、「絶対的強者」であり続けるアップル社。今回『「見えない資産」が利益を生む GAFAMも実践する世界基準の知財ミックス』著者の鈴木健二郎氏が、アップル社の強さの秘密を「組織の内部構造」に焦点をあてて解説します。

アップルの知財をマネジメントする知財組織構造

アップルには、知財ミックスのマネジメントを行うための知財組織構造が確立されています。組織図を見ると分かりますが、本社経営企画部門の中に「コーポレートR&D」(本社の研究開発部門)があります。

 

[図表3]アップルの知財をマネジメントする組織構造
[図表3]アップルの知財をマネジメントする組織構造

 

コーポレートR&Dの企画を行うチームのひとつとして「IPカウンセル」(知財戦略部門)があり、そのほかにハードウェア事業部門(iPhoneのようなものづくりビジネスを実行)、インターネット及びサービス事業部門(App StoreやiTunesなどのソフトウェアやコンテンツサービスを実行)、小売及び店舗事業部門(製品・サービスを顧客に届けるためのオンラインストアや店舗運営、知財ライセンス事業を実行)といった各事業部門の中に「コマーシャルIP」(事業知財部)といわれる各事業部門のビジネスの実行現場に寄り添った知財担当者のチームが用意されています。

 

本社のIPカウンセルは、日本の企業でいうところの「知財部」とはおよそ性格を異にしています。まず、事業部門ごとにIPカウンセル内の担当チームが分かれ、それぞれに責任者が配置されて連携し合いながら活動しています。またIPカウンセルのトップは、他社との係争においてフロントに立つ法務部門の補佐的な立場を担っています。

 

IPカウンセルの各事業部門の責任者は、事業部門ごとに割り振られた予算(特許出願と年金費用、訴訟費用、ライセンス料等)をさらに各事業部門のコマーシャルIPに割り振ることで本社としての事業部門を横串で束ね、ガバナンスを利かせています。

 

また、各事業部門のコマーシャルIPの実務は、すべて世界共通のITシステムで管理されており、職員各自のルールへの理解度や遵守意識に依存することなく回すことができています。

 

これにより、本社のIPカウンセル内の事業部門ごとのチーム責任者は、世界中の支社に散らばった事業部門のコマーシャルIPの業務の状況がリアルタイムに把握できるようになっています。

 

注目すべきは、各事業部門のコマーシャルIPの担当者がそれぞれのマーケティング部門と連携しながら事業部門間で横串を刺し、ブランド、デザイン、データ等のデジタル資産、技術などの多様な知財をミックスで管理できる組織体制がつくられていることです。

 

 

鈴木 健二郎

株式会社テックコンシリエ代表取締役

知財ビジネスプロデューサー

 

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※本連載は、鈴木健二郎氏の著書『「見えない資産」が利益を生む GAFAMも実践する世界基準の知財ミックス』(ポプラ社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「見えない資産」が利益を生む GAFAMも実践する世界基準の知財ミックス

「見えない資産」が利益を生む GAFAMも実践する世界基準の知財ミックス

鈴木 健二郎

ポプラ社

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