日本が「長期間デフレを放置」したワケ
なぜ日本は、こんなに長期間、デフレを放置することになってしまったのか。それを考えるために、元凶であるバブル崩壊後を振り返ってみましょう。
バブル崩壊により資産価値が暴落したことで、日本は不良債権処理に追われることになります。しかし、本当は不良債権処理から始めるべきではなかったのです。
このときは、まず、金融政策と財政政策を積極的に行って、経済を健康な状態に戻すことを優先すべきでした。そして経済が良くなったところではじめて、不良債権処理を行えばよかったのです。
というのも、下がった資産価値を早めに引っ張り上げることができれば、負の影響は軽減できたからです。景気が良くなり債務者側の経営が立ち直れば、「不良債権」は「正常の債権」に変わりえます。
不良債権処理というのは、人間に例えるとダイエットのようなもので、体にもそれなりの負担がかかります。誰も病床の身でダイエットはしません。病気のときにはお粥の炭水化物量を気にしている場合ではなく、しっかり栄養を摂って病気を治すのが最優先です。
それなのに、日本はまだグッタリしているときにダイエットを始めてしまったのです。ゆえに、病気をこじらせた=デフレを長引かせてしまったのです。
さらに、行うスピードも大切です。日本は1990年にバブルが崩壊してもしばらくの間、利上げしていました。ようやく利下げに転じたのが1991年7月、そして日銀の速水優総裁が「ゼロ金利政策」を打ち出したのは1999年2月でした。バブル崩壊から、実に9年後のことです。
そもそも金融緩和に転じたのが遅かったうえ、利下げペースも遅く、10年くらいかけて段階的に行いましたので、結局デフレに陥ってしまいました。
一方、アメリカを見ると、リーマン・ショック後も、コロナ・ショック後も、3ヵ月程度で一気にゼロ金利まで下げています(図表)。
要するに、バブル崩壊以降の20年以上、日本はデフレ対策をきちんと行えないまま、不況だけが続いていたのです。
永濱 利廣
第一生命経済研究所
首席エコノミスト
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