“失敗”できない…日本に不足する“トランポリン型社会”
「安心して失業できる国」とまではいかなくても、日本はもっと「安心して失敗できる国」であっても良いのではないでしょうか。
職業訓練や就業支援といった再就職支援を充実させることは、失業者の労働市場への早期復帰につながります。これは労働市場の流動性を高めるうえで重要なポイントです。このような、一度キャリアを離脱しても、再び戻れるような社会を「トランポリン型社会」と呼びます。
手厚い「再就職支援」がある北欧
特に、スウェーデンやフィンランドなど北欧の国々では、再就職への手厚い支援があることで知られています。
例えば、スウェーデンの「YH制度」という高等職業訓練所のシステムでは、産業界の今のニーズをカリキュラムに反映させることを重視しています。企業がほしいスキルを学ぶことができるので、卒業後すぐに再就職することができます。あるいは、企業からリストラされた後も、労働組合が再就職支援やアドバイスをしてくれる制度もあるそうです。
実際にフィンランド、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーでは、社会人年齢とされる25歳~64歳の教育参加率が65%前後と、軒並み高くなっています(図表)。
北欧ほどではないにせよ、アメリカやカナダ、オランダ、イギリス、ドイツなど、安定して経済成長している国では、社会人年齢での教育参加率が6割近いのに対し、日本は41.9%と相対的に低く、50.1%の韓国にも水をあけられています。
こうしたデータを見ると、何度でも学び直し、再チャレンジしやすい社会であることと、経済成長率はつながっているように見えます。
ただし、アメリカの場合は社会人年齢での教育参加率は高いのですが、GDP(国内総生産)に対する再就職支援の割合は非常に低くなっています。これは、すべて自己責任という社会を反映しています。
金銭的・時間的余裕があれば再教育を受けられるけれど、それはすべての人に叶うわけではありません。アメリカの場合は自由市場がやや行きすぎており、これが圧倒的な経済格差にもつながっています。
そのため、政府主導で再就職支援を行う北欧のトランポリン型社会のほうが、日本の経済成長にとっては望ましいと考えられます。