なぜマンション価格は上がるのか?
日本の消費者物価指数は1997年をピークに下がり、2013年のアベノミクス開始頃から少しずつ上がっています(図表1参照)。
消費者物価指数を厳密に説明すれば、消費者が購入するモノやサービスなど消費財の物価の動きを把握するための統計指標で、「CPI(Consumer Price Index)」とも呼ばれています。
一方、新築マンション価格は変動が激しく、1980年代~1990年頃まではバブル景気でドンと上がり、バブル崩壊後に一気に下がって低迷し、2000年代後半から、また上がり始めています(首都圏ではアベノミクス以降再び大きく上がっています)。
なぜ消費者物価指数と新築マンション価格にこれだけ差が出るのかと言うと、資産と消費財・サービスの違い、つまり「ストック」と「フロー」の違いです。
「フロー」は蛇口から流れる水、「ストック」はその水が流れてバケツに溜まったもの、とイメージしていただければわかりやすいでしょうか。
日々取り引きされる食品や消費財など、フローにはそのときどきの価格が反映されます。
一方、不動産や株、あるいは金などの資産(=ストック)には、将来期待される儲けが反映されます。
つまり、目下の需給だけでなく、将来の経済状況への期待値も含めて価格が決まるので、値動きが激しくなりやすいわけです。
バブル期に将来もっと価格が上がるだろうという期待によって不動産価格が高騰したのもこのためですし、逆に現在の価格より下がるだろうと予測する人が多ければ不動産の値段は下がっていきます。
つまりこのグラフからは、首都圏の新築マンション価格は将来もっと上がるだろう、と思っている人が多いということが窺えます。
とはいえ、「物価は横ばいなのに、なぜ?」と思う人も多いと思います。実際、海外では物価(フロー)と資産価値(ストック)は程度の違いはあれ、ともに上昇トレンドです。これがかなり乖離してきたのは、過剰貯蓄という日本の特殊な状況が一因として考えられます。
日本では将来への不安から節約志向が強く貯蓄が過剰に増えている一方、株などの金融資産で運用を行う人はまだまだ海外にくらべて少ないため、その使い道のひとつとして不動産投資の需要が高まり、資産価値を上げている側面があると思われます。
もちろん、外国人が投資目的で日本の不動産を買っている影響もありますが、決してそれだけではないのです。