なぜ日本人の給与は増えないのか
厚生労働省の発表によると、2018年の日本の平均給与は433万円でした。しかし、バブル崩壊直後の1992年は472万円。四半世紀前より40万円近くも平均給与が下がっているのです(ともに1年を通じて勤務した平均給与)。
さて、日本の平均賃金をOECD(経済協力開発機構)加盟諸国と比較したのが図表1です。これは、購買力平価ベースの実質賃金データを、2020年時点で少ない順に並べたものです。
日本は3.9万ドル(411万円)で、これはOECD加盟諸国の平均以下の数値です。
他の国を見てみると、アメリカ6.9万ドル(741万円)、スイス6.5万ドル(694万円)、オランダ5.9万ドル(630万円)、カナダとオーストラリアが5.5万ドル(591万円)、韓国4.2万ドル(448万円)、スロヴェニア4.1万ドル(443万円)、イタリアとスペインが3.8万ドル(403万円)、ギリシャ2.7万ドル(291万円)となっています。
日本はアメリカの半分強しかありません。スイス、オランダ、カナダ、オーストラリアの6~7割、韓国やスロヴェニアの約9割です。日本が停滞していた間に、世界は着実に成長していたことが窺えます。
なぜ、日本の給与はこんなに低いままになっているのか。それはひとえに、日本が長期のデフレスパイラルに陥っているからにほかなりません。そして日本には、デフレスパイラルに陥りやすい、そしてデフレスパイラルから抜け出しにくい理由があるのです。
賃金が上がらない理由①労働分配率が低い
バブル崩壊中の1990年代前半、日本では「価格破壊」という言葉が流行りました。まさに「デフレスパイラルの始まり」の象徴と言えるでしょう。
バブル崩壊後、不良債権処理に追われたことで、お金の使い道として借金返済が優先され、企業や店舗の売り上げが減りました。企業や店舗は少しでも売り上げを増やそうと、価格を下げる↓儲けが減る↓働く人の給料が上がらない↓さらに人々はお金を使わなくなる↓モノやサービスがさらに売れなくなる↓値下げをする……、まさに「いいことなし」のスパイラルに陥っていったのです。
そして、このデフレスパイラルは、海外よりも、日本で起きやすいことが知られています。理由はいくつかありますが、まず挙げられるのが「労働分配率の低さ」です。
「労働分配率」とは、付加価値額に占める人件費の割合です。
計算式は「労働分配率=人件費÷付加価値額×100」です。
ここで言う「付加価値」とは、「売上高-(仕入原価+原材料費、外注費等の外部購入費用)」、「人件費」とは「給料+会社が負担する法定福利費や福利厚生費」で求められます。要するに「企業が儲けをどれだけ賃金として分配したか」という尺度のことです。
図表2を見ていただければ、ドイツやアメリカに比べて、日本の労働分配率が一貫して低いことがわかります。とりわけドイツとは10ポイント近い差がついています。
これは企業が儲かっても従業員の賃金としてなかなか反映されにくいということですから、労働分配率の低さとは「賃金の上がりにくさ」を表していると言えます。