1.結果の概要:10会合連続の利上げを決定
9月14日、欧州中央銀行(ECB:EuropeanCentralBank)は政策理事会を開催し、金融政策について決定した。概要は以下の通り。
【金融政策決定内容】
・0.25%ポイントの利上げを決定(9/20から、主要3金利すべて引き上げ)
・3つの主要な政策金利は、これが十分に長い期間続けば、インフレ率が目標に速やかに回帰するために重要な貢献をする水準に到達したと考えている
【記者会見での発言(趣旨)】
・PEPP再投資やAPP売却については議論していない
・政策金利の水準と期間のうち、焦点はより期間に移行している
・スタッフ見通しは実質成長率を23年0.7%、24年1.0%、25年1.5%と予想(下方修正)
(前回6月は23年0.9%、24年1.5%、25年1.6%)
・インフレ率を23年5.6%、24年3.2%、25年2.1%と予想(23-24年を上方修正)
(前回6月は23年5.4%、24年3.0%、25年2.2%)
・コアインフレ率を23年5.1%、24年2.9%、25年2.2%と予想(24-25年を下方修正)
(前回6月は23年5.1%、24年3.0%、25年2.3%)
2.金融政策の評価:今後の利上げ余地が小さいことを示唆
ECBは今回の会合で、0.25%ポイント利上げを決定した。これで22年7月以降、政策金利を合計4.50%ポイント上昇させたことになる。
前回7月の会合以降、理事会関係者が今回の決定に関する示唆を与えなかったこともあり、市場は利上げと据え置きの双方の予想が見られたが、利上げが決定された。
一方で、声明文では「3つの主要な政策金利は、これが十分に長い期間続けば、インフレ率が目標への回帰を速やかに達成する水準に到達したと考えている」として今後の利上げ余地が小さいことが示唆された。ラガルド総裁自身も、政策金利の焦点が、金利水準からその水準を維持する期間に移っていると発言している。
金融政策が、3つの反応関数((1)最新の経済・金融データに照らしたインフレ見通しの評価、(2)基調的なインフレ動向、(3)金融政策の伝達状況)をもとに「データ次第」で運営されるという原則は変わっていないが、今後のインフレ動向が概ね今回提示された見通しに沿ったものであるならば、追加利上げに踏み切る可能性はかなり小さいと考えられる。
なお、今回提示された見通しは、前回6月からやや見直された(総合インフレ率で上方修正、コアインフレ率で下方修正)ものの、目標を超えるインフレ率が長期化する予想に変化はない(四半期ベースで総合インフレ率が2%目標まで低下するのは25年7-9月期、コアインフレ率は25年末でも2%を上回る1)。
先行きの不確実性は依然として高いと見られるため、引き続き今後のデータが注目されるが、見通しで提示されたようにインフレ低下スピードが遅い場合、「利上げ」ではなく、「高金利を維持する期間」が長期化して利下げ転換が後倒しになると見られる(ただし、ラガルド総裁は今回の会合では「期間」について具体的に議論していないと述べている)。
1なお、政策金利経路の前提は明かされていない(具体化されていない)が、3か月EURIBORの前提で23年3.4%、24年3.7%、25年3.1%となっている(見通し作成時点の市場予測をもとにしている)。
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