配偶者控除だけに頼らず、二次相続も見据えた対策を
テクニック5 配偶者控除、小規模宅地等の相続税の特例を利用する
相続税には特例があります。特に節税効果が大きいのは「配偶者控除」と「小規模宅地等の特例」です。
①配偶者控除
相続財産を配偶者が相続する場合、実際にもらった正味の遺産額が法定相続分以内であれば非課税です。また、法定相続分を超えて相続しても、1億6000万円までは非課税になります。
配偶者控除は、相続によって配偶者が多額の相続税を被り、納税のために自宅を手放すほかなくなるといった悲劇がないように、との配慮から生まれた特例です。配偶者の生活を守るためのものですから、使うべき場面では大いに使うといいでしょう。
ただし、配偶者控除にだけ頼って節税するのは危険です。なぜなら、二次相続が控えているからです。夫婦のどちらか一方が亡くなるのが一次相続で、残った一方も亡くなると二次相続になります。
たとえば、一次相続で夫が亡くなったとき、とりあえず相続税を回避するために相続財産の大半を妻が相続したとします。たしかに、このときは配偶者控除で相続税は低くなるでしょう。しかし、二次相続が起きたときは、夫から相続した財産がそのまま妻の相続財産となっているだけなので、子に多額の相続税が降りかかってきます。
配偶者控除で一次相続の相続税を回避しても、結局、二次相続で相続税がかかってきてしまうのです。これは相続税の先延ばしにすぎません。一次相続で配偶者の相続財産が大きく増えた場合には、二次相続までに何らかの対策をして、配偶者の相続財産を減らしておかなくてはならないのです。
小規模宅地等の特例は「持分あり」の医療法人のみ利用可
②小規模宅地等の特例
自宅の敷地には最大330㎡まで、小規模宅地の特例を使うことができます。適用すると評価を8割減にでき、1億円の土地でも2000万円の評価になるのです。
被相続人が所有している病院の土地についても、次のどちらかに当てはまれば、この特例を利用できます。
⃝被相続人が所有する土地を医療法人が借りて、そこに医療法人が病院を建てている場合(土地は被相続人の名義で、病院は法人の名義)
○被相続人の所有する土地に被相続人が病院を建てており、その病院を医療法人に貸している場合(土地も病院も被相続人の名義で、医療法人は賃料を払って病院を使わせてもらっている)
次の5つの要件を満たす場合には、「特定同族会社事業用宅地等」に該当し、最大400㎡まで8割評価減ができます。
⃝相続時に、被相続人および親族が法人の持分の50%以上を保有していること
○法人の役員が宅地を承継すること
○法人が相続税の申告期限まで、事業の用に供していること
○宅地を承継する者が相続税の申告期限まで所有を続けていること
○土地または建物を、法人に順当な賃料で継続的に賃貸借していること(安すぎる賃料や無料で貸していると「使用貸借」となり、医療法人に「賃貸借」したことになりません)
なお、医療法人が小規模宅地等の特例を適用するためには、「持分あり」の医療法人でなければなりません。
【図表 病院の土地に小規模宅地等の特例を適用できるパターン】