前回は、「保障期間を変更できる生命保険」に加入するメリットを解説しました。今回は、生命保険を活用し、子への財産贈与を有利に行う方法を見ていきます。

3万~5万円といった低額で譲渡できる特殊な終身保険

②解約返戻金のない終身保険を低い金額で譲渡する

保険は、法人契約のものを個人に譲渡したり、個人契約のものを法人に譲渡したり、個人Aの契約したものを個人Bに譲渡したりすることができます。

 

譲渡する際は、解約返戻金の額で行います。譲渡の時点で解約返戻金が1000万円なら1000万円で買い取ることになります。

 

少々特殊な保険商品になりますが、解約返戻金がたまっていかない終身保険というものがあります。この商品は、解約返戻金が常に3万円や5万円といった極めて低い額になっています。ですから、いつでも3万~5万円で権利をやり取りすることができます。

 

この商品を使うとどんなことができるでしょうか。

 

最初に、被相続人である父が契約者となり、娘を被保険者にした保険を購入します。死亡時に2500万円が支払われる商品で、掛け金が2000万円としましょう。相続税率が40%適用される人の場合、相続財産が2000万円減ったことで、約800万円の節税になります。

 

さて、父が亡くなり相続が発生したときに、この商品を孫(娘の子)に相続させます。

 

保険そのものの相続財産評価額は3万~5万円です。すると、被保険者である娘が亡くなったとき、孫のもとに2500万円が入ってきます。2000万円の掛け金に対して2500万円が支払われたのですから、約500万円の得です。

 

父の相続で約800万円が節税でき、さらに保険金で約500万円が増えました。トータルすると、約1300万円をほぼ無税で移転できたことになります。

「貯蓄型の保険」に加入しておけば後々役に立つ

③暦年贈与したお金で子や孫の保険に入り、将来のセーフティーネットにする

子や孫に暦年贈与の110万円の控除枠内で贈与をし、それを保険料に充てさせます。

 

普通に100万円を贈与すると、無駄に使ってしまうかもしれませんが、保険料なら無駄に消えていくことはありません。

 

子や孫にとっては毎回払う保険料が負担になりがちで、しばしば払いきれずに中断してしまうことがありますが、贈与で毎年保険料をもらえれば、ずっと続けることができるでしょう。

 

保険に入っておくと万一のときに安心ですし、貯蓄型の保険は長く置いておけば、それだけ解約時の戻りがよくなります。これからは公的年金もアテにならない時代になりますから、子や孫が現役を引退したときに、生活資金としてきっと役に立つはずです。毎年の贈与のお金が、子や孫のセーフティーネットとなって彼らの生活を守ってくれるのです。

 

子や孫はあなたの遺してくれたものの大きさに後になってから気づき、感謝の手を合わせるに違いありません。

 

④金利の高いドル建て生命保険を贈与する

③の方法で保険料を贈与し、ドル建ての生命保険に充当する方法も有効です。ドル建ての生命保険は、日本円よりも金利が高く設定されています。為替が変動することによるリスクはありますが、長期運用することでリスクを減らすことができます。為替レートのいいタイミングを待って解約すれば、損をすることはありません。

 

ドル建て保険で贈与しておくと、お子さんやお孫さんが海外旅行をしたり海外留学をしたりするときに使うことができて便利です。日本円を外貨に換えるには手数料がかかりますが、最初から外貨で持っておけば少なくて済みます。

 

日本経済は今後、先細りが予想されています。人口が減少し経済活動が低下していく一方で国の借金は1000兆円もあり、このままいけば、ほぼ確実にハイパーインフレが起こります。そうなれば日本円の価値は大きく下がるでしょう。このリスクヘッジのためにも、ドルで持っておくのがおすすめです。

本連載は、2016年5月27日刊行の書籍『相続破産を防ぐ医師一家の生前対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続破産を防ぐ 医師一家の生前対策

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井元 章二

幻冬舎メディアコンサルティング

医師一家の相続は、破産・病院消滅の危険と隣り合わせ 今すぐ準備を始めないと手遅れになる! 換金できない出資持分にかかる莫大な相続税 個人所有と医療法人所有が入り乱れる複雑な資産構成 医師の子と非医師の子への遺…

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