保障期間を延長し、返戻金を院長の退職金の原資に
前回の続きです。期間延長できる保険にはもう一つ、こんな使い道があります。
開業したばかりの頃は借金もあり、大きな保険にはなかなか入れません。それで保険料を安く抑えるために、保障期間の短い掛け捨ての保険に入っている人がいます。こういう場合、業績が安定してきてお金に余裕が出てきたタイミングで、保障期間を延長します。
すると、解約返戻金のピークがずっと後ろにずれることになります。
70歳で引退したいと思うなら、返戻率のピークが70歳あたりに来るように期間を延ばすのです。こうしておいて、70歳で引退するときに解約すれば、多くの返戻金を手にすることができます。これを原資として退職金を支払えば、法人の経営を圧迫することはありません。
保障期間を短縮することもできます。
期間を短縮すると、先ほどとは逆に責任準備金に余剰が生じます。この差額が戻ってきますので、死去のタイミングが保障期間内にあれば、死亡保険金は入ってきます。
このように期間を変更できるタイプの保険であれば、病気や病院の経営状態によって臨機応変に対応することができます。
【図表】 定期保険の期間延長②
保障期間より長生きすると、保険金はゼロ!?
期間変更のできない保険の場合は、次のようなケースがありました。
院長先生が病気になり、余命が数年といわれた院長夫人がいました。院長先生はすでに他社で3億円の生命保険に入っていましたが、それは70歳で満期になる掛け捨ての保険でした。院長先生が余命宣告されたのは67歳のときでした。
院長先生は結局、69歳と3カ月で亡くなったのですが、随分後になってから奥さまは苦しいことを告白するように、こんな話をされました。
「こんなことをいうと人間性を疑われるかもしれないけれど、70歳までに亡くなってホッとしました」と。
「夫に少しでも長く生きていてほしいと思う反面で、70歳を超えて生きてしまったら、保険がゼロになってしまうことが心配でした。もし、保険金が入ってこなかったら、病院を閉じるしかなかっただろうし、自分たちの生活もどうなっていたか分かりません。70歳までに、と願っている自分がとても嫌で、自分自身を呪いました」
この奥さまのような苦しい想いをさせないためにも、定期保険は期間変更のできるタイプを選んでいただきたいと思います。
【図表】 定期保険の期間短縮