(※写真はイメージです/PIXTA)

厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を整備したことで、副業をもつ方が珍しくなくなってきました。法律的には副業をすることの問題はなくなりましたが、兼業・副業に対して禁止や許可制にしている企業もまだまだ多いのが実情です。会社にバレたらどうしようと思いながらこっそり副業をしている方もいるのではないでしょうか。副業バレはどのようにして起こるのか。税理士法人松本がその仕組みを解説するとともに、バレる仕組みから逆算した“副業バレのリスクを下げる方法”を紹介します。

会社に副業していることがバレた…いったいどうして?

副業をしても法律的には問題ありませんが、本業に支障をきたす可能性や情報漏洩のリスクを懸念して就業規則等で副業禁止にしている会社もあります。副業禁止をしている会社で、会社には内緒で副業をして、会社に副業がバレてしまったケースもあります。

 

<個人住民税の金額や通知書から副業がバレるケース>

ほとんどの会社員は、毎月の給料から住民税が天引きされる特別徴収となっています。住民税が増加することにより会社に副業がバレる可能性があります。副業先から得る収入が給与所得である場合は、本業の所得と合算されて特別徴収されることが多いため、本業先の会社にバレてしまうことがあります。

 

給与所得の場合は、確定申告時に自分で納付を選択しても、地方税法上、会社は従業員の住民税を給与天引き(特別徴収)しなければならないことになっているため、副業分の所得も合算されて本業先に特別徴収の税額が通知されてしまいます。

 

住民税の納税額は前年度の所得によって決定するため、副業で所得が増加すると、その分住民税も増加します。会社で支払っている所得が300万円だった場合、同じ所得の人と同じくらいの住民税になるのが通常です。前年の副業分の所得が200万円だった場合、所得が本業の300万円+副業の200万円=合計所得500万円になってしまうため、その分住民税が増加し、会社内で同じ年収をもらっている人よりも住民税が多くなります。そこから経理担当者が気づき会社にバレてしまう可能性があります。

 

また、各市区町村から会社(納税義務者用)に送られてくる従業員の税額通知書には事業主が知る必要のない給与所得以外の所得情報(不動産所得、利子・配当所得、一時所得等)や控除情報(障害者、寡婦)等の情報が含まれています。これらの情報部分に秘匿措置(シール貼付等)を講じないまま税額通知書を事業主に送付している市区町村はまだあります。

 

総務省から各自治体にお願いベースの依頼となっているため、地方税法で義務付けられていません。プライバシー保護の観点から何らかの措置は講じてほしいものですが、予算が確保できない自治体では難しいのが現状でしょう。

 

<社会保険料から副業がバレるケース>

副業で得ている所得が、パート・アルバイトなどの給与所得の場合は、社会保険が原因で副業がバレるケースもあります。パート・アルバイトだったとしても、副業先で以下の要項を満たした場合は社会保険に加入しなければなりません。

 

●週の所定労働時間が20時間以上

●所定内賃金が月額8.8万円以上

●2ヵ月を超える雇用の見込みがある

●学生ではない

●従業員数101人以上の企業(2024年10月~は51人以上)

 

本業と副業先の給与を合算した金額から社会保険料が算出されます。合算された給料を元に決定された社会保険料は、本業の会社宛に決定通知書が送付されます。この決定通知書が本業の会社に届くことで副業がバレてしまいます。

 

また、副業先の社会保険料も記載されていますので、おおよそいくらの給料なのかも検討がついてしまいます。

 

<取引先から副業がバレるケース>

会社が税務署に1月31日までに提出する支払調書がきっかけとなり、副業が会社にバレてしまうケースもあります。

 

税務署に提出される支払調書に記載された情報が、本業の会社に提出されて副業がバレてしまうわけではありません。副業分の所得を無申告でいた場合、副業分の所得と本業の所得を合算すると、配偶者控除・配偶者特別控除が適用できなかったケースなどです。配偶者控除・配偶者特別控除には所得制限があるため、会社が行った年末調整と源泉徴収票に誤りがあることになり、役所が会社に住民税の特別徴収税額の変更の通知を行うことになります。

 

ここから、本業の会社が不審に思い、副業がバレてしまう可能性があります。

 

配偶者控除・配偶者特別控除以外にも、医療費控除や寄付金控除などから副業がバレてしまうこともありますので、副業分で得た収入はしっかり確定申告を行いましよう。

会社への「副業バレ」を回避するには?

【住民税を自分で納付する】

副業先からの収入が給与所得ではなく、事業所得または雑所得であれば、確定申告書の第二表に記載されている「住民税に関する事項」で住民税の納付方法を給料から天引きされる「特別徴収」ではなく「自分で納付(普通徴収)」を選択します。副業分の所得にかかる住民税分の納付書が住所地に届きますので、期日内に納付するようにしましょう。

 

●特別徴収:給料から毎月住民税を天引きされ、会社が代わりに納付する方法

●普通徴収:自分で住民税を納付する方法

 

普通徴収になっているか不安な人は、確定申告をした後に、お住まいの市区町村に「普通徴収」になっていることの確認をするとよいでしょう。市区町村に連絡をすることで、誤って特別徴収の通知が行くような間違いを防ぐことができます。

 

【副業していることを人に話さない】

副業をしていることを、人にあまり話さないようにしましょう。副業をしていることを話した際、実は近くの席に会社の人がいたなど、情報がどこから漏れるかわかりません。

 

また、飲み会の席も注意が必要です。普段は気をつけていても、アルコールを摂取したことで、気持ちが大きくなり、うっかり話してしまう可能性もあることでしょう。

 

どこから副業していることが会社にバレるかわかりません。副業していることは誰にも話さないことをおすすめします。

一方、「副業バレによる解雇・懲戒処分」は無効となる可能性大

法律的に副業することは問題ありません。勤務時間以外は労働者のプライベートな時間です。その時間を利用して副業をしても法律上の罰則はありません。しかし、本業の会社が副業を禁止しており、就業規則に副業・兼業の禁止を制定している会社もあります。違反すると減給・降格などのペナルティを課せられることがあります。

 

副業していることが会社にバレて、もし副業が原因で解雇や懲戒処分を受けたとしても、その処分は無効になる可能性が高いです。

 

過去の裁判例で、無許可の副業や兼業を理由とする解雇について、不当解雇と判断し、多額の支払いを命じたケースも多く、裁判所は、副業は原則として自由であるという考えをとっています。副業により本業に支障がある場合や、競業他社などで副業をすることで企業秘密が漏洩する危険がある場合にのみ、会社は副業を禁止できるという考え方がとられています。

副業所得に「申告」が必要になるのはいくらから?

<副業所得20万円以下の場合>

副業所得が20万円以下なら所得税の確定申告をしなくても問題ありませんが、確定申告をしておくことをおすすめします。理由としては、給与所得であれば源泉徴収された後の金額を手取りの給与として受け取っています。このとき源泉徴収されている金額は、本来納めるべき所得税の金額を上回っている可能性もあり、所得税を納めすぎている場合があるのです。

 

このような場合は、納めすぎている所得税を還付してもらうため、確定申告をした方が良い例です。

 

また、所得税の確定申告は不要でも住民税の申告は必要になります。

 

所得税の確定申告をしていない場合は、副業所得分の住民税が計算できないため、副業が20万円以下か、20万円超であるかに関わらず、住民税の申告をする必要があります。

 

住民税の申告をしないままでいると、後から副業所得分の申告がないことを役所が気づき、調査が行われる場合もあります。何年分もまとめて徴収されることもあり、支払いができないと預金や不動産の差押えなどが行われる場合があります。

 

住民税の無申告により、副業が会社にバレる確率も上がるので、会社の就業規則で副業禁止となっている方は、申告を怠らないようにしましょう。

 

<副業所得20万円を超える場合>

副業所得が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。

 

ここでいう所得とは、売上から必要経費を差し引いた金額のことを指します。たとえば、副業での売上が50万円で経費が25万円の場合、副業所得は25万円となり、確定申告をしなければなりません。確定申告をしなければならない人が無申告のまま放置したり期限を過ぎたりすると無申告加算税や延滞税がかかります。

 

確定申告をせずに放置していると、副業が会社にバレる以上の高いリスクが発生するため、必ず期日内に申告を行いましょう。

 

現金でもらっているから、バレないだろうと考えている方は注意が必要です。

 

取引先が税務署に「支払調書」を提出している場合は、所得があることがバレています。支払調書とは、事業主が税務署へ提出することが義務づけられている法定調書のひとつです。法人や個人事業主が取引先に対して特定の業務の対価の支払いを行った場合は、その支払金額と源泉徴収税額等を記載して税務署に提出する書類のことです。

 

支払調書に記載されている内容は以下になります。

 

--------------------------------------

●支払を受ける者の住所や所在地、氏名や企業名

●支払を受けるもののマイナンバーまたは法人番号(税務署へ提出用にのみ記載)

●報酬や料金の名称

●報酬や料金の明細(支払回数など)

●年間の合計支払額

●源泉徴収額として、その年度中に源泉徴収すべき税額

●支払者の個人番号または法人番号(税務署へ提出用にのみ記載)

--------------------------------------

 

支払調書は、特定の業務の対価の支払いを行った個人や法人を記載したらよいのですが、よくわからず、すべての個人に対して支払った内容を支払調書に記載し、税務署に提出している会社もあります。

 

支払調書を確認した税務署は、支払がある個人が確定申告をしていないとなると、無申告であることがわかるため、税務調査を実施することになります。税務署の調査官にもノルマがあり、なるべく多くの調査所得の増加がほしいのが実情です。調査官から見て、実際にはある所得を申告していない無申告の方への税務調査はとてもやりやすいと言えます。

副業所得を無申告でいるとどうなるの?

確定申告をしないことを「無申告」と言いますが、税務署や国税局は、税制改正を行い、今後は無申告者の取り締まりをより一層強化していく方針です。所得税法と法人税法が改正され、2023年1月から税務申告で計上しなかった経費の存在を、税務調査後に提出する経費、いわゆる「後出し経費」を認めないというものです。

 

後出し経費とは、それまで帳簿に記載されていなかった経費を税務調査で無申告や仮装・隠蔽を指摘されたのちに、初めて主張することを指します。帳簿や領収書等の支払先を明らかにする書類を保存していない、税務署が行う反面調査などでも取引が認められない場合は「後出し経費」は損金不算入となり、経費にならない措置となります。

 

また、過少申告加算税および無申告加算税については、税務調査時に調査官から求められた帳簿を提出できなかったり、売上金額等の記載が著しく不十分だった場合には、通常の過少申告加算税や無申告加算税の額に、ペナルティーが加算される見直しも盛り込まれています。

 

これまでは、税務調査の着手後も、税額を増加させる更正処分が課されることが予知される前までに修正申告をすれば、過少申告加算税または無申告加算税は課されませんでした。

 

今後は、国税庁職員に帳簿の提示又は提出をしなかった場合、提出したとしても売上金額等の2分の1以上が著しく記載されていなかったときには申告漏れ等に係る税額の10%が上乗せされ、なんとか提出したとしても、売上金額または収入金額の3分の1以上が記載されていなかったときは5%が上乗せされるというものです。これらは、2024年1月以降に法定申告期限が到来する国税に適用されるようになります【図表】。

 

作成: 税理士法人松本
【図表】副業所得を無申告でいると… 作成: 税理士法人松本

まとめ

副業分の収入を確定申告をしていなかった場合、放っておくと、いつかは税務調査が入る可能性があります。税務調査では原則として、調査の前に予め調査日時や調査の目的などを伝える事前通知が行われます。税務調査では、税務調査官によって売上や経費について細かな質問が行われ、必要な書類の提示や提出を求められます。調査中は、専門用語も多く用いられますので、何を質問されているのかが分からず、どのように答えれば良いのか、納税者は答えに迷ってしまうことでしょう。

 

税務調査が入ってから整理しようでは遅く、副業をいつから始め、年間どのくらいの売上を得ていたか、どのくらいの経費を支払ったかの整理は日々行うようにしましょう。

 

国も税制改正を行い、今後は無申告者の取り締まりをより一層強化していきます。ペナルティも増加傾向にある現在、無申告は絶対に避けるようにしましょう。

 

副業の収入を確定申告しないまま、税務調査の通知が来てしまった場合には、できるだけ早く税務調査に強い税理士に相談してみることをおすすめします。

 

 

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

 

税理士法人松本

税務調査特化税理士法人として全国6ヵ所(渋谷、錦糸町、新宿、横浜、柏、大阪)にオフィスを構え、“成功報酬型”税務調査サポートを提供する税理士事務所では国内No.1の規模を誇る。国税局に勤めていた、いわゆる「国税OB」が複数名所属。税務調査相談実績は累計1000件以上。一般業種より税務調査が厳しいと言われる風俗業界の税務に10年以上特化し、追加徴税額ゼロ円の実績も多数。

 

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