かつて見た悪徳税理士…「経費の水増し」で脱税
会社などでは、売上から経費を差し引き、残ったものが利益になります。その利益に対して法人税がかかるのですが、利益が高ければ高いほど税金は高くなります。ですから、税金を払いたくない人たちは利益を下げたいと考えます。
利益を下げるには、売上を下げる、もしくは経費を水増しするといった手口が使われます。あるとき、この二択のうち経費を水増しする方法を選んだ税理士がいました(※どちらがいい悪いという話ではなく、両方ともダメですよ)。この先生を仮にA先生とします。
私たち税理士は税理士報酬というものをいただくのですが、A先生は経費を水増しするスキームの1つとして、この税理士報酬を急に高くしたのです。A先生に相談した会社に対して「書類を書いたことにしておくので、報酬を200、300万円多く振り込んでおいてください」と。
そうすると200、300万円が経費になるので、利益が減る⇒税金が減る⇒会社が「よかった!」という流れになります。ただ、このままでは納税者側(会社)が報酬を多く払っただけで何も得していないので、A先生は税理士報酬から自分にかかる税金の分を差し引き、残りをキックバックしました。
国税局に脱税がバレて「あなたの税理士バッジが飛びますよ!」
脱税は麻薬と一緒で、一度手を染めると癖になりやすいものです。A先生の手法は普通に考えるとヤバいのですが、これも麻薬なのでしょう。A先生は同様の手法を何十件も行っていき、最終的に国税局にバレました。
国税局には税理士を監督する税理士専門官という部隊があります。A先生は税理士専門官の方々から「これは脱税の幇助(ほうじょ)ですよ」「あなたの税理士バッジが飛びますよ!」と非常に怒られました。
A先生も資格を剥奪されるのは困ります。それは勘弁してほしい…ということで、不正に水増しした分を正しい金額へと直すこと、つまり修正申告をすることを条件に許されることになりました。
お客様に連絡するのかと思いきや、大量のハンコを取り出し…
A先生は何十件もの修正申告書を一生懸命書いて税務署に提出したのですが、そもそも修正申告をするにはお客様の許可が必要です。
通常なら、当時のお客様に「すみません。前回の税理士報酬を200、300万円多くもらってキックバックした件なんですが、国税局にバレて直すことになりました。なので貴社に納税の話が行きます」などと連絡することになると思います。
ところが、すごいことにA先生はハンコをいっぱい持っていました。蓋をぱかっと開けると何百本ものハンコが入っていて、それを押して勝手に修正申告書を出したのです。これには驚かされました。
修正申告書を出すと、納税者に「こういう経緯で利益が多くなったので、追加で税金をこれくらい払ってください」という書類が届きます。
ただこのとき、お客様のなかに一人、すでに亡くなっている方がいたのです。
亡くなっている方のハンコを勝手に押したので、その息子さんを激怒させてしまいました。A先生の税理士バッジはかろうじて飛びませんでしたが、自分のバッジのほうが大事だからと勝手にハンコを押すのは恐らく悪い税理士だと思います。
脱税ではなく「節税」を提案してくれる税理士を
長く企業経営していくことを考えると、脱税は自らを滅ぼす行為です。多額の税金を納めるのは誰しも容易ではありません。だからこそ計画的な節税と資金計画が重要であり、そのためにはしっかり節税の提案や納税の予測を立ててくれる良い税理士と付き合うことが大事です。
松本 崇宏
税理士法人松本 代表税理士
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本
税務調査特化税理士法人として全国6ヵ所(渋谷、錦糸町、新宿、横浜、柏、大阪)にオフィスを構え、“成功報酬型”税務調査サポートを提供する税理士事務所では国内No.1の規模を誇る。国税局に勤めていた、いわゆる「国税OB」が複数名所属。税務調査相談実績は累計1000件以上。一般業種より税務調査が厳しいと言われる風俗業界の税務に10年以上特化し、追加徴税額ゼロ円の実績も多数。
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