地球にやさしい発電方式として注目される風力発電ですが、事業者によって環境への配慮はまちまちだといいます。そこで自然保護NGOが、独自の評価軸で風力事業者をランキング。みていきましょう。

実は自然環境への悪影響が懸念される風力発電計画もある

気候変動および生物多様性の損失は、社会や経済に大きな影響を及ぼす喫緊の課題です。地球規模で、これらの課題の同時解決を目指す取り組みが不可欠です*1

 

しかし、急増する再エネ関連事業による生物多様性への悪影響が国際的にも懸念されています。特に日本では、近年、陸上風力発電計画の件数・規模ともに急拡大し、各地で自然環境や住環境面に影響を及ぼす恐れのある計画が増えています*2

 

日本自然保護協会は独自で267件の陸上風力発電計画の環境影響評価図書(以下「アセス図書」)を詳細に分析し、各事業がどのような自然環境の中で計画されているのかを解析して、事業の自然環境への配慮や市民への情報公開などに関する問題点を明らかにしました。

 

その結果、事業者や各事業によって環境配慮や情報公開に大きな違いがあることが判明し、配慮が不十分なものが少なくないことがわかりました。事業者ごとの環境配慮に関するランキングも作製し、特に自然環境への影響の面で強い懸念のある陸上風力発電計画10件をリストアップしました。

 

【風力発電事業者ランキングレポートの主な結果とポイント】

・過去5年間に発行された環境影響評価図書(アセス図書)267件を対象に解析

・計画のうち、4割以上が原生林に近い森林を、2割が天然記念物で絶滅危惧種であるイヌワシの生息域を事業実施想定区域(想定区域)に含めていた。

・事業者、計画ごとにも自然環境面への配慮に大きな違いがみられ、配慮を試みて計画をしている事業者と、明らかに配慮を欠いている事業者に二分された。

・環境アセス図書の常時公開が多くの事業者でなされておらず、本来的な環境アセスの目的である利害関係者との合意形成と情報公開の点で課題がみられた。

・真に持続可能な再生可能エネルギー推進のために、生物多様性保全上の重要地域を避け、利害関係者との広い合意形成などが求められる。

事業者ごとに見えてきた自然環境への配慮の違い

このレポートでは業界における主要な事業者ごとに自然環境などへの配慮に違いがあるか着目しました。

 

解析対象とした267件の計画のうち、特に計画数の多い上位11の事業者について、アセス図書の常時公開の状況と、自然環境に関する12の項目(植生自然度9および10、特定植物群落、保安林、緑の回廊、自然公園、そして希少鳥類6種の生息地)について、配慮の状況をみました(表1)。上位11の事業者の計画数を合計すると165件となり全体の6割を占めます。

 

表1は、自然環境の12の項目について、各々の事業者の全計画件数中、何件の事業実施想定区域にそれらの項目が含まれているかを割合で示しています。

 

 

事業者ごとの自然環境への配慮の状況をまとめ、ランキングにしたものが表2です。表1~2からもわかるように、事業者によって自然環境配慮状況は大きく異なっていました。

 

▲指数は、自然環境12項目の各偏差値を平均して算出。指数が高いほど、自然環境への影響が大きい事業を多く計画しているということになる
指数は、自然環境12項目の各偏差値を平均して算出。指数が高いほど、自然環境への影響が大きい事業を多く計画しているということになる

 

次に、アセス図書およびEADASから、今回解析対象とした267件の個々の陸上風力発電計画について自然環境への影響を検討しました。その結果、特に自然環境への影響の面で強い懸念のある陸上風力発電計画10件をリストアップしました(表3)。

 

リストアップした計画については、希少鳥類のバードストライク(鳥類が風車のブレードに衝突して死亡する事故)の危険性が非常に高い区域を含んでいる計画や、生物多様性の保全を目的とした「緑の回廊」を事業想定区域のほぼ全域に含んでいる計画など、その問題点を指摘し、計画の撤回や抜本的見直し、自然環境への影響の大きい一部区域の除外など、改善点を紹介しました。

 

 

 

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