年間50兆円に達する、被相続人と相続人がどちらも60歳以上の高齢者となる「老老相続」。その一部でも、自分の遺志で社会に還元できたなら……いま注目を集める「寄付遺贈」について考えていきます。

高齢化の加速で増加する「老老相続」とは

日本では2007年に65歳以上の人口が総人口に占める割合である高齢化率が21.5%に達し、「超高齢社会」に突入しました。高齢化率の上昇とともに増えているのが、被相続人と相続人がどちらも60歳以上の高齢者である相続「老老相続」です。

 

日本人の個人金融資産残高は過去最高の2,023兆円(2022年12月末・日銀2022年第4四半期の資金循環 (速報))となり、そのうち年間約50兆円の遺産の大半が60歳以上に相続されています。消費や投資行動が緩やかな世代の間で資金移転が繰り返され、なかなか活きた形で資金が社会に巡らない状況が加速しているのです。

 

一方で、相続人がいない場合は、どうなるのでしょうか。残された資産は最終的に国庫に帰属。2021年度にはその額も647億円と過去最高を記録しています(最高裁判所調べ)。

 

このような社会情勢の中、「遺贈寄付」「遺産寄付」に注目が集まっています。老老相続のうち50兆円のわずか5%、毎年2.5兆円が遺贈として公益法人やNPO法人、大学などへ寄付され、社会課題の解決のための取組みに活用されたなら……さまざまな分野で活かされ、社会に還元されることになるでしょう。

最期の社会貢献…遺贈先をどのように決めればいいのか?

遺贈寄付を遺言書に記す……そうすれば、どのような団体の活動に資産を受け継ぐか、自分の意志で「最期の社会貢献」として使い方を決めることができます。

 

ただし遺言書は認知能力に問題がない元気なうちに作成しておく必要があります。そのため、将来的に遺贈寄付をすることを決めたとしても、実際に寄付されるのは、数十年あとになることがほとんどです。

 

そのため、「どういう分野の団体に遺贈するとよいのか」「その団体は長く活動を継続できるのだろうか」「果たして、安心して遺贈を託せる団体なのだろうか」、遺贈先について、どのように調べれば良いのか、どのように判断すればいいのか、悩むことでしょう。

 

遺贈先の選び方の手順のひとつとして、まずは以下の3つのポイントを整理。そのうえで、興味・関心のある活動分野から選ぶことをお勧めします。

 

・具体的に支援したい団体があるか

・支援したい特定の分野や地域はあるのか

・遺贈寄付先は自分で選定するのか

 

よく知られているNPOの分野としては、人道支援、子ども支援、医療支援、災害復興支援などがあります。ほかにも自然環境保護や、文化・芸術・スポーツ・科学技術の振興や農山漁村の支援などもあげられます。

 

次に段階として、活動地域が海外か、日本全国か、地元の地域かなど、団体の規模や活動範囲を選択。そうすると、少しずつ自分が支援したい団体が絞られてくるでしょう。

 

ただ多くの団体を自身で調べるのは非常な苦労です。そういう場合は、遺贈に関する中間支援団体や、遺言作成や執行者を担う弁護士や司法書士などの士業、遺言信託を取り扱う信託銀行などに相談してみましょう。第三者として遺贈のアドバイスをくれるでしょう。

 

たとえば、全国レガシーギフト協会の「いぞうの窓口」では、「遺贈寄付の倫理に関するガイドライン」を作成。このガイドラインに遵守する遺贈先団体を分野ごとに検索可能なWEBサイトを公開しています(https://izoukifu.jp/consideration/partner/)。

 

自然環境や動物愛護の分野では、環境保護に取り組む弁護士の団体「日本環境法律家連盟(JELF)」が、環境保護団体の組織の信用度を弁護士が調査。報告書を公開して遺贈先団体を推薦する「みどりの遺言プロジェクト」(http://jelf-justice.net/project/index.html#02)も参考になるでしょう。

 

ほかにも、各団体が主催する終活相談会やオンライン終活セミナーへの参加してみたり、少額のお試し寄付をしてみたりして、注力している活動内容を確認し、遺贈先を選ぶケースもみられます。

 

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