耐震基準への質問から始まった「論点ずらし」
この時だった。居住支援法人格を持つ、行政から見れば「好ましいエクストリーム大家」とでもいおうか。行政各所と連携密なことで知られるNPOの代表が声を張り上げた。
「いろいろあって社会復帰、新たな人生のスタートを切ろうという人に、耐震基準も満たしていない家に住まわせる! ああ、恐ろしい! うちはね、ちゃんと耐震基準、もちろん新基準、それも2000年基準を満たしたおうちに住んでもろうてますぅ!」
さらにこのNPOの代表が続ける。
「社会復帰した人が地域社会に溶け込めるよう、温かく迎え入れるだけの度量を持った人や、教養ある品のええ人ばかりが住んでいる地域もありますわ。もしかして、あなた、そういう方との付き合いがない? ガラの悪い地域にしか物件持ってない? そらまあ、利益追求しか目がいきませんわね!」
どうも筆者はアウェイに立たされたようだった。検察庁のお役人が鼻で笑っているのがわかった。筆者はやたらと絡んでくるNPO代表のほうを向き、こう問いかけた。
筆者「社会貢献しながら、経営を成り立たせることを考えるのはいけませんか?」
NPO代表はお役人を見ながら、こう返した。
「そういうのはね、国やお役所のご指示を仰ぎながらやることでしょう? 国あっての国民ではないのかな?」
検察庁のお役人とNPO法人がアイコンタクトして頷く。
「うちはね、引き受けた入居者の方に、これまでの過去を踏まえたうえで、ええ暮らしさせてますんや。あんたは黙って行政も面倒見切れんようなガラ悪い入居者集めて、せいぜいカネ儲けしときいや!」
この発言が終わると同時、大袈裟に拍手する年配の男がいた。彼もまた居住支援法人格を持つ“御用NPO”の代表だった。
春川 賢太郎
ライター・フリージャーナリスト
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