(※写真はイメージです/PIXTA)

老後生活を考えるうえで欠かせないのが“終の棲家”です。多くの人は「住み慣れた自宅」を思い浮かべるでしょうが、身体的な衰えやケガに病気、そのほかさまざまな理由から終の棲家として「老人ホーム」を選ぶ人も少なくありません。しかし、周りに相談せず自分たちだけで決めてしまうと、後々大変なことになるリスクも……牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、具体的な事例を交えて解説します。

A夫婦が老人ホームに住んだ「本当の理由」

それから数週間後、今度はA夫婦が筆者のところを訪れ、夫婦が施設に入所した詳しい理由を教えてくれました。

 

奥様は、「うっかり娘に夫婦の貯蓄残高を話したら、娘が『子どもの大学進学費用や学費の援助をしてほしい』と言い始めたんです。これまでの小遣いをねだるのとはわけが違うし、この辺でけじめをつけておきたいけど、どうしたらいいのか……。しばらく悩んでいたんです」といいます。

 

その様子を見ていたAさんは、妻が認知症ではないかとあわてて施設探しを開始。妻は妻で、「ここでお金を使えば娘もなにもいえないだろう」と夫が勧めるままに施設見学へ行き、入所を決めたそうです。

 

なお、施設に紹介された認知症専門医のもとで夫妻ともに検査を受けたところ、お互いに「年相応の健康体」とのことで、特に治療するところもなかったそうです。

 

妻が認知症ではなく、すぐさま介護が必要な状況にはないとわかったA夫婦は、今後の生活について以下の3つのことをFPとともに決めました。

 

1.施設は退去して返金してもらい、自宅の売却は中止。リノベーションを実施後に賃貸にして、夫婦は手ごろなマンションに住み替える。

 

2.「長男には自宅を、娘にはこれから住むマンションを相続する」「夫婦が亡くなったあとに現金や銀行預金が残っていれば、子どもたちが均等に分けられるようにする」旨を書いた遺言書を作成する。

 

3.老人ホームなどに入所するときは、事前に子どもたちに相談し、適切な価格の施設に入所する。

 

試算の結果、A夫婦が新居のマンションに引越し、家賃収入を得られれば、高額な施設に入所しない限りは100歳近くまで家計収支に問題なく過ごせることを確認。上記3つを取り決めた2人は、反省をもとにすぐに子どもたちに連絡を入れていました。

 

「施設での生活は毎日がバカンスで快適だったけれど、これぐらい短期間で十分だったかもしれないね」。夫婦顔を見合わせて、微笑んだのでした。

 

 

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

 

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※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。
<参照>
1.日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html)
2.厚生労働省「介護を受けながら暮らす高齢者向け住まいについて」
(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000038005_1.pdf)

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