両親に「老後破産」の可能性はある?
娘は、筆者のFP事務所を訪れるにあたって、両親が住む施設のパンフレットを持参したうえで次の3つの質問を用意してきました。
1.父が先に亡くなっても母は施設で生活を続けられるか
2.施設の介護サポート内容は充実しているか
3.施設を退所する場合、初期費用は戻ってくるのか
筆者はFPの立場から、上記の質問についてそれぞれ下記のように回答しました。
1.父が先に亡くなっても母は施設で生活を続けられるか
万が一Aさんが先に亡くなった場合、奥様は「遺族厚生年金」が受給できます。受給額は以下のとおりです。
<夫が亡くなったあとの妻の年金受給額※>
遺族厚生年金143万6,000円
+
妻自身の老齢年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)86万9,800円
‖
230万5,800円(月額:19万2,150円)
※ なお、詳細は日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」を参照のこと。
施設でかかる費用については、2人部屋から1人部屋になれば家賃は割高にはなるでしょうが、夫婦で生活するときの毎月13万円([前掲図表2]参照)ほどの赤字にはならず、生活を続けることができるでしょう。
ただし、夫婦で生活していても、通常は年齢とともに医療費などが増加する一方、生活費は減少傾向にあります。しかし、施設に入所すれば生活費は減少することなく一定の金額に保たれるほか、値上げの懸念すらあります。
2.施設の介護サポート内容は充実しているか
有料老人ホームは、主に「介護付き」と「住居型」の2種類があります。それぞれの特徴は以下のとおりです。
※1 特定施設入居者生活介護とは、都道府県から指定を受けた特定施設(「介護付き」有料老人ホームのこと)で、入居している要介護・要支援の認定を受けた人を対象に、介助(食事、排泄、入浴、着替えなど)や機能訓練などのサービスを行うことをいう。
※2 有料老人ホームに入所して介護保険適用の介護サービスを受けるとき、「介護付き」「住宅型」ともに利用者の負担額割合は、所得に応じて1割~3割。
A夫婦が入所した施設は、パンフレットを見る限り「住居型」です。「介護が必要になった際は、施設を運営している関連施設を紹介します」と記載されてはいるものの、施設から介護サービスは提供されません。
したがって、今後Aさんや奥様に日常的に介護が必要な状態になった場合はその分の出費が増え、最悪施設に住めなくなることも考えられます。
その場合、Aさんが試算した90歳まで家計は維持できず、「老後破産」する可能性もあります。
3.施設を退所する場合、初期費用は戻ってくるのか
入居日から3ヵ月以内に契約が終了したときは、老人福祉法施行規則の短期解約特例(「90日ルール」)が適用され、支払った初期費用(入居一時金)は、所定の額を差し引いて戻ってきます。
A夫婦が入居2ヵ月後にホームを退去するなら、入所していた2ヵ月分の費用を支払い、約2,200万円が戻ってくるでしょう。
「約2,200万円が戻ってくるかもしれない」と聞いて、娘はいくぶん安心したようです。ただ、「なぜ急に入所したのか理由がまだわからないし、両親とも話し合ってみます」そう言って、その日は帰って行かれました。
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