それ、いまやる仕事じゃないよね?…イライラしても「言うべきではない」よくある一言【組織開発専門家が解説】

それ、いまやる仕事じゃないよね?…イライラしても「言うべきではない」よくある一言【組織開発専門家が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

日々のちょっとした発言や行動の中で、相手にリスペクト(敬意)を伝える。その積み重ねがあるかどうかが、組織の一体感に大きく影響してきます。組織開発専門家・沢渡あまね氏の著書『悪気のないその一言が、職場の一体感を奪っている』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、職場の一体感を奪うコミュニケーションの具体例とその解決策を紹介します。

【具体例】優先順位を間違えてしまう人がいる

メンバーが優先順位の低い仕事、いま取り組む必要のないと思われる仕事の結果を報告してくる。そんな場面では、マネージャーやリーダーは「そんなこと、後回しでいい!」と感じてしまいます。これは報告の場面に限らず、職場のさまざまな局面で見られる問題であるため、もう少し掘り下げて考えてみます。

 

例えば、緊急事態が起こって、チーム全員でトラブル対応を優先しなければいけないときに、その流れに気づかない人もいます。緊迫したムードの中で、みんなが作業の手を止めて状況確認や対処のために力を合わせているのに、自分の席に座って、通常業務を淡々と進めているメンバーがいる。そのような場面では、マネージャーの口調も荒くなりがちです。

 

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マネージャー「〇〇さん、いま何やっているの?」

 

メンバー「来月リリースする××機能のテストです」

 

マネージャー「それ、いまやる仕事じゃないよね? 空気読もうよ」

 

メンバー「えっ?」

 

マネージャー「そんなこと後回しでいいから、こっちに手を貸して!」

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「そんなこと…」はチームの一体感を損なう一言

緊急時にも自分の通常業務を優先するような人がいたら、イライラしてしまうのも仕方がありません。しかし、自分の仕事を「そんなこと」と言われたら、メンバーはどんな気持ちになるでしょう。「私の仕事って『そんなこと』なんだ」と感じるのではないでしょうか。

 

同様の仕事をしている人も、同じように落胆するかもしれません。「このマネージャーは、私たちの仕事を『そんなこと』だと普段から思っていたんだ…」、言われた本人だけではなく、その仕事を生業としている人たちへの悪影響も考えられます。こうして、マネージャーとメンバーとの溝が生まれてしまう。

 

この表現は、その対象の価値をおとしめる言い方。公衆の面前で「そんなこと」と口にするのは、一緒に働くメンバーへのリスペクトを欠く行為です。そのような言い方をしていたら、たとえ悪気がなかったとしても、チームの一体感を損なってしまうでしょう。

【解決策】仕事の目的や内容を適切に伝える(=情報の共有)

望ましくない優先順位の報告がくる。緊急時でも作業を切り替えられない人がいる。そのような問題が続くようであれば、チームのコミュニケーション、仕事の進め方がうまくいっていないのだと考えましょう。メンバーが優先順位の判断に悩む/迷うのは、仕事の目的や内容が適切に伝わっていないからです。

 

期待にそぐわない報告が上がってくるのは、氷山の一角だと考えてください。その背後にはもっと多くの「認識の違い」があるはずです。

 

マネージャーやリーダーの初動は前回のケースと同じ。まずは報告に感謝します。緊急時でも通常業務を進めている人がいたら「いまどんな仕事をしているのか」を質問し、確認する。そこで回答を得たら、まず「ありがとう」です。状況を確認できた点に感謝しましょう。仕事の優先順位が正しく認識されていないとわかった。あとは、優先的に取り組んでほしい仕事を伝えるだけです。

 

「いまは緊急事態なので、このトラブルの解決を急いでほしいです」

 

「事態が収束するまでは、通常業務よりもトラブル対応を優先します」

 

「具体的には、あなたには〇〇の仕事を任せたいです」

 

このような言い方で仕事の目的と内容を伝えれば、メンバーも状況を正しく認識し、迷わず仕事に取り組めるでしょう。通常業務への情熱を失ったりはしません。

 

もちろん、マネージャーやリーダーとて全知全能の神ではありません。たまたま自分に見えていないだけで、じつはいますぐやらなければいけない優先度の高い他の仕事があり、その仕事にメンバーが取り組んでいる可能性も十分あります。ところが、頭ごなしに否定されては、メンバーはその説明をする余地が生まれないですし、それ以上話す気にもなれません。

 

その意味でも、感謝をベースにした対話をする。その場での対話で優先度を合意していく。その余地形成は、お互いの「すれ違い」「景色違い」をなくす上でもきわめて重要です。

【ポイント】相互に敬意を示しながら、「すれ違い」「景色違い」を減らす

認識の齟齬があった場合には、情報共有のチャンスだと考えましょう。仕事の目的や内容が伝わっていないと気づき、やり方を見直すためのよい機会です。お互いに一生懸命やっている点には理解や敬意を示しながら、業務プロセスを改善していく。次回以降の記事で仕事の依頼の仕方の工夫について解説します。そちらも参考にしてください。

 

氷山の一角をとらえて対応を始めれば、それ以外のやりとりも改善していくはずです。仕事の優先順位をより明確に示して、すれ違いを減らしていきましょう。

 

 

沢渡 あまね

作家/ワークスタイル&組織開発専門家、『組織変革Lab』主宰

 

400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。著書『新時代を生き抜く越境思考』『うちの職場がムリすぎる。』『職場の問題地図』ほか。#ダム際ワーキング推進者。

 

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※本連載は、沢渡あまね氏の著書『悪気のないその一言が、職場の一体感を奪っている』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

悪気のないその一言が、職場の一体感を奪っている 心地よく仕事するための真・常識「リスペクティング行動」

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沢渡 あまね

日本能率協会マネジメントセンター

【「なんでうちの職場は機能していないの?」を解消するには、リスペクトの醸成が必要だった!】 同調圧力/減点主義/厳しく指摘する/上下関係/つぶし合う/皆で仲良く苦しむ(ゆえに深夜残業に付き合わされるといったこ…

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