税込1万円未満でインボイス不要!「少額特例」を活用しよう
◆事務処理がラクになるが期限付きの措置
インボイスには保存の義務がありますが、数百円、数千円の少額の経費までインボイスを必ず発行してもらい、なおかつ要件を満たしているかを確認するのは大変です。
そうした事務処理の負担が考慮され、税込1万円未満の少額取引については、インボイスを保存しなくても帳簿の保存のみで仕入税額控除ができる「少額特例」が設けられています。
少額特例を受けられるのは、基準期間(2期前)の課税売上高が1億円以下または特定期間の課税売上高が5000万円以下の事業者。個人事業主であれば、ほとんど少額特例の対象になります。
税込1万円未満かどうかは、1回の取引ごとに判定するので、例えば5000円の商品と7000円の商品を同時に購入した場合(合計1万2000円)には、少額特例の対象にはなりません。
ただし、これは今のところ令和11(2029)年9月30日までの経過措置。その後はインボイスの保存が必要になる見込みです。ということは、先々は少額の経費でもインボイスの要件を満たしているかを確認する必要が出てきます。この猶予期間中にインボイスに慣れること、会計処理のフローを整理しておくことが大切です。
また、帳簿を付けることが特例の前提ですので、少額の経費だからと放置せず、きちんと帳簿を付けましょう。
◆少額特例の内容
対象になる人
前々年(前々年度)における課税売上高が1億円以下または前年(前年度)の上半期(個人事業主は1月~6月)における課税売上高が5000万円以下
特例の内容
税込1万円未満の取引であれば、帳簿の保存を条件に仕入税額控除可能
期間
令和5(2023)年10月1日~令和11(2029)年9月30日
◆少額特例に該当する取引のイメージ
税込1万円未満の少額取引については、インボイスを保存しなくても帳簿の保存のみで仕入税額控除ができる「少額特例」が設けられている。
「売上票」「利用明細書」はインボイスの対象外!
◆「ご利用明細」はインボイスにならない
仕入税額控除を受けるには、支払い方法に関係なく要件を満たしたインボイスをもらう必要があります。もちろんクレジットカード払いも例外ではありませんが、特に注意すべきことがあります。
店舗でクレジットカード払いをすると、白色の「レシート」と、クレジット決済システムの会社が発行する色付きの「クレジット売上票」の2種類を受け取ります。
この2つは一見似ていますが、図表2の例を見ると、クレジット売上票にはインボイス登録番号や取引の内容(商品名など)が記載されていません。こうしたクレジットカード売上票だけではインボイスにはならないので、保管に注意しましょう。
なお、毎月カード会社から送られてくる「利用明細書」は、どこにいくら支払ったかはわかっても、1つひとつの支払いの情報は載っていないので、インボイスとしては認められません。
ただし、インボイス制度導入にともなって、利用明細書とは別にインボイスの発行を受け付けるなど、新たな対応を取ることを案内しているカード会社も出てきています。
インボイス制度はカード会社にも影響が大きいため、順次制度に適した対応が取られていくことが予想されます。カード会社の公式サイトなどで最新情報をチェックしましょう。
◆クレジットカード払いでもインボイスの要件を満たしていないとダメ
クレジットカード売上票ではインボイスの要件を満たさない。レシートとセットで保管しておこう。
カード会社から届く「利用明細書」はインボイスとしては使えない!
酒井 富士子
経済ジャーナリスト
西原 憲一
西原会計事務所 代表/税理士