口座振替で支払う家賃、光熱費…毎月継続発生する取引のルール
◆毎月継続して発生する取引のルール
家賃や水道光熱費といった毎月発生する支払い(取引)についてのルールも把握しておきましょう。
居住用家賃については、自宅を仕事場として使っているという場合、「非課税取引」にあたります(記事『インボイス制度の超キホン…〈消費税がかかる取引・かからない取引〉の違いとは?』参照)。非課税取引は仕入税額控除の対象外なので、インボイスの保存も不要です。ただし、所得税の確定申告では家賃の一部を経費として計上できるので、混同しないようにしましょう。
一方、不動産管理会社などから店舗やオフィスを借りている場合は「課税取引」にあたり、仕入税額控除の対象になります。
賃料が口座振替で毎月同額が引き落とされ、そのつどインボイスをもらうことが難しい場合には、管理会社にインボイスの登録状況を確認しましょう。
管理会社が登録済みの場合、インボイスに必要な内容が記載された賃貸借契約書と振替口座の預金通帳をセットで保存しておけば、毎回インボイスを発行してもらうことなく仕入税額控除を受けられます。
水道光熱費については「課税取引」にあたるので、仕入税額控除の対象になります。水道光熱費のように「毎月継続して行われる取引」については、インボイスがなくても仕入税額控除をすることが認められています。ただし帳簿付けは必要なので忘れないようにしましょう。
なお、水道光熱費が居住用家賃に組み込まれている場合は「非課税取引」になります。
◆家賃は仕事場をどこにしているかで扱いが変わる
自宅の一部を仕事場にしている場合、オフィスや店舗を借りている場合で、取引の種類や仕入税額控除が変わる点に注意!
◆水道光熱費は「継続して行われる取引」に該当
電気・ガス・水道など、適格請求書発行事業者から「継続して行われる取引」については、見積額が記載されたインボイスの発行を受けられない場合でも、後日金額が確定した際に発行されるインボイスの保存を要件として、見積額で仕入税額控除を行うことが認められている。
立替払いをしてもらったら「立替精算書」の作成依頼を
◆宛名が違うと仕入税額控除ができない!
自分が支払うべき経費を、取引している事業者に代わりに支払ってもらう場合、支払ってもらった経費に対するインボイスの宛名が代わりに支払った人の名前になっていると、仕入税額控除を受けることができなくなります。
その場合は、立替払いをしてくれた事業者に「立替金精算書」を発行してもらう必要があります。下記の図表2を見てみましょう。
ライターのAさんが、撮影に使用したスタジオの利用料金をカメラマンのBさんに立替払いをお願いしたとします。このとき、スタジオから受け取った領収書(インボイス)の宛名がBさんになっているため、その領収書を受け取っただけでは、Aさんは仕入税額控除を受けられません。そこで、Bさんに立替の内容がわかる「立替金精算書」を作成してもらい、スタジオから受け取ったインボイス(コピー可)と一緒に提出してもらうように依頼します。
Aさんは、受け取った立替精算書とインボイスを両方保管することで、Bさんに立て替えてもらったことを証明でき、仕入税額控除を受けることができます。立替を行ったBさんが免税事業者であっても、インボイスを発行したスタジオがインボイス発行事業者であればOK。
なお、立替の数が多く、インボイスが大量にある場合は、立替を行ったBさんにインボイスの保管をお願いすれば、Aさんは、立替金精算書のみを受け取ることで仕入税額控除ができます。
◆立替払いをするときのやり取りのイメージ
酒井 富士子
経済ジャーナリスト
西原 憲一
西原会計事務所 代表/税理士