前回は、都の条例で共同住宅を建てられない「旗ざお状の土地」を活用した事例を紹介しました。今回は、地主と不動産会社の共同事業「等価交換」の概要について見ていきます。

地主と不動産・建設会社の共同事業とは?

立地条件に恵まれた土地を持つ地主には、不動産・建設会社、銀行から様々な話が持ち掛けられます。等価交換は、その一つです。地主は土地を提供します。不動産・建設会社は資金を提供します。互いに資産を出し合い、そこに建物を建設します。その土地・建物を、出し合った資産の価値に応じて、地主と不動産・建設会社で分け合います。

 

建物がマンションであれば、例えば総戸数100戸のうち、土地の評価が50%で建設資金およびその他の合計が50%であれば50戸を地主が、50戸を不動産・建設会社が取得する、というイメージです。

 

地主は手に入れたマンションを貸しに出すこともできますし、売りに出すこともできます。土地のまま、例えば駐車場用に貸しに出すのに比べれば、収益性はぐんと上がります。しかも、元手はいりません。

 

等価交換という共同事業に乗り出すことで、土地の価値を大きく高めることができるわけです。富山市の中心部に所有する店舗で商売を営むHさんも、そうした話を持ち掛けられた一人です。

著しく変化した小売業を巡る事業環境

周辺の地権者とともに、大手デベロッパーから等価交換による共同事業に参画しないか、と打診を受けていました。知人の兄という間柄が縁で出会った地元商工会の実力者です。その方は常に街の活性化を願い、どうすれば往時の賑わいを取り戻せるかを思案していました。

 

店舗が立地する一帯はかつては繁華街のど真ん中ではありましたが、店を畳んだ商店主も少なくなく、いわゆるシャッター通りの様相を見せる場所も見られました。市内の小売販売額は1996年をピークに減少の一途をたどっていました。出会った当初は、そうしたさびしくなってしまった街に賑わいを取り戻すにはどうすればいいか、という話を交わしていました。

 

昔を知るHさんは、「繁華街がなぜ、シャッター通りに変わってしまうのか」と、疑問を投げ掛けます。話はそう単純ではありませんが、一つには、かつては栄光を誇った繁華街には保守的で新しいものを受け入れにくい素地があるように思います。

 

大型店の進出やネット通販の普及など、小売業を巡る事業環境は著しく変化しています。それによってダメになっていった町々の例も数多く知っていました。そうした時代の変化に柔軟に適応できないのです。

 

私は持論を展開しながら、時代の変化にうまく対応している事例を紹介したりしてきました。

本連載は、2014年6月12日刊行の書籍『変形地の価値を高めるマンションづくり』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

変形地の価値を高める マンションづくり

変形地の価値を高める マンションづくり

宮坂 正寛

幻冬舎メディアコンサルティング

別荘地のような斜面地、一角に他人の土地を挟む変形地、奥まった場所にある旗竿地…。 活用をためらってしまうような条件の悪い土地を活用するためには、その土地の潜在価値を引き出すことが重要です。本書では、そのために必…

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