担当行員からの「お願い営業」…キッパリ断っていい?
「融資してもらっているから頭が上がらない」とは考えなくていい
今までの銀行取引では「銀行に選んでもらう」意識が強かったことから、銀行のほうが立場が上で、融資を受けている側は強く出られないという風潮がありました。銀行に気を使って、いろいろと我慢をしてきた社長も多いかもしれません。
しかし、今後は「銀行を選ぶ」時代になっていくので変な気遣いはしなくて大丈夫です。具体的に私が受けた質問のなかから「対等な付き合い」について考えてみます。
まず「融資を断られた。担当者は要望に沿えずすみませんと言うだけで、理由をはっきりと教えてくれない。もっと理由を聞いてもいいだろうか」という質問です。こういうときは担当者に遠慮しないで融資を謝絶する理由をきちんと聞くべきです。理由が不明確だと、次に打つ手を考えられません。
かつての銀行ではあまりはっきり教えてくれない風潮がありましたが、現在は金融庁から「利用者保護」の観点に基づき謝絶の理由を説明するよう指導されています。
詳しくは「金融庁:銀行監督上の評価項目」を読んでもらうといいですが、そのなかに「顧客の要望を謝絶し貸付契約に至らない場合」という項目があります(Ⅱ-3-2-1-2)。そこには「可能な範囲で、謝絶の理由等についても説明する態勢が整備されているか」と銀行の説明責任が明示されています。
次に「担当者から営業協力依頼を受けたが断ってもいいか。断ると融資取引に悪影響が出るか」という質問です。
営業協力依頼というのは、「今月ノルマが厳しくて保険に入ってもらえませんか」などの勧誘をすることです。確かに目標達成が難しいときはこういう勧誘をしがちなのですが、銀行は融資をしている優越的地位を利用して金融商品の購入を強要する行為を禁止されています(ただし、正常な商取引の範囲内で金融取引をすることはあり得ます)。社長の側が望まないのに無理に勧めてくるなどの場合は、はっきり断ってしまって問題ありません。
もし断ってもしつこく勧誘してくるとか、断ったことで関係が悪化し不利益を被ったなどがあれば「優越的地位の濫用」に当たるので金融庁に相談できます。
銀行と会社(社長)とは対等な立場です。「融資をしてもらっているから頭が上がらない」などと考える必要はありません。お互いにとってストレスのない関係を築くことが、長く取引していくうえで欠かせないのです。
川居 宗則
中小企業診断士
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
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