〈実話〉「これから本格的にいじめてやる」同僚の女性社員7名から壮絶ないじめ…“同僚相手”でも「パワハラ」に該当するのか?【裁判所が下した判断】

〈実話〉「これから本格的にいじめてやる」同僚の女性社員7名から壮絶ないじめ…“同僚相手”でも「パワハラ」に該当するのか?【裁判所が下した判断】
画像:PIXTA

法改正に伴い、近年企業における「パワハラ」はより厳格に取り締まられるようになってきました。本連載は、弁護士である山浦美紀氏の著書『パワハラのグレーゾーン-裁判例・指針にみる境界事例-』(新日本法規出版)より、一部抜粋して紹介。実際の現場で起こり得る企業のグレーゾーンな事例を取り上げながら、弁護士が分かりやすく解説します。

ポスターを掲示する行為

さらに、顔写真付きのポスターを掲示する行為は、具体的には、パワハラの定義のうち、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動かどうか、そして、「労働者の就業環境が害される」言動かどうかが問題となります。

 

裁判例でも、職場に「この者とは一緒に勤務したくありません!」「舟艇課一同」等と記載された被害者の顔写真付きポスターを掲示した行為が問題となった事案があります(東京都ほか(警視庁海技職員)事件=東京高判平22・1・21労判1001・5)。

 

このようなポスターの掲示は、心理的に追いつめて圧力をかけ、辞職せざるを得なくなるように仕向ける目的で、名誉を毀損し、侮辱するものであり、違法である旨、判断されました。本事例のような侮辱的な言葉を記載した顔写真付ポスターの掲示は、業務上必要なものでもありませんし、手段として不相当です。また、労働者の就業環境も害するものであり、パワハラに該当します。

【実例】冗談では許されない言動

令和4年6月23日のNHKのネットニュースにおいて、住宅会社の男性社員が、上司から勤務成績を表彰する「賞状」を、病気の「症状」ともじり「大した成績を残さず、あーあって感じ」などと侮辱することばを書いて渡されるなどのパワハラを繰り返された末、自殺したとして、遺族が住宅会社などに対して8000万円余りの損害賠償請求訴訟を提起した旨の報道がありました。

 

実際の裁判例でも、販売目標数未達の社員に、研修会参加の際、ウサギの耳の形をしたカチューシャを付ける等したコスチュームを着用して参加するように強要した事案があります(K化粧品販売事件=大分地判平25・2・20労経速2181・3)。

 

このような行為は、目的が正当なものであったとしても、もはや社会通念上正当な職務行為であるといえず、心理的負荷を過度に負わせる行為であると判示されています。

 

これ以外にも、朝礼や挨拶の席上で、冗談のつもりで発した言葉が部下や同僚の名誉を毀損したり侮辱的な言動になってしまったりすることがあります。

 

行為者としては冗談のつもりでも、受け手側からすれば、冗談では許されない精神的苦痛を与える言動に当たり得ることがあります。職場における安易な言動にはくれぐれも注意が必要です。

 

 

山浦 美紀

鳩谷・別城・山浦法律事務所

弁護士

パワハラのグレーゾーン-裁判例・指針にみる境界事例-

パワハラのグレーゾーン-裁判例・指針にみる境界事例-

山浦 美紀

新日本法規出版

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