(※写真はイメージです/PIXTA)

生前に被相続人から特定の相続人が受けた利益、「特別受益」についてご存じでしょうか? 特別受益をめぐって、他の相続人とトラブルになるケースは多くあります。今回は、その「特別受益」にまつわるトラブル等について詳しく解説していきます。

特別受益を主張する際の手続き方法

他の相続人が特別受益を主張し、持ち戻しするように要求する場合、まずは特別受益を受けた相続人と話し合いを行います。手続きの流れをみていきましょう。

 

1.通常の遺産分割協議を実施→特別受益に関する歩みよりがみられ、相続人間で合意できれば「遺産分割協議書」を作成

 

2.遺産分割協議が不調に終わった場合、家庭裁判所で「遺産分割調停」を実施→調停内容に合意すれば「遺産分割調停書」を受け取る

 

3.遺産分割調停が不調に終わった場合、家庭裁判所で「遺産分割審判」を実施→審判内容に不服がなれば「遺産分割審判書」を受け取る

 

4.遺産分割審判に不服の場合、家庭裁判所を管轄する高等裁判所に「即時抗告」→高等裁判所に申立て、却下・棄却・原審判の取り消しが判断される

 

なお、審判や即時抗告の際は特別受益を主張する側に立証責任があり、持ち戻し免除の立証責任があるのは特別受益を受けた相続人です。

 

遺産分割審判や即時抗告まで進んでしまうと、解決までに1年以上かかる可能性があります。また、相続人間の信頼関係に大きくヒビが入るかもしれません。

 

早期解決のため、当事者同士が歩み寄れるよう互いに妥協する必要はあるでしょう。

他の相続人から特別受益の主張をされた場合の対処法

特別受益の主張をされた場合には、次の対処法を検討してみましょう。

 

・持ち戻し期間の制限:持ち戻しの計算の対象が、相続開始前10年間に贈与された物に限定(2019年民法改正)

 

・贈与財産の評価基準時の計算:贈与財産の価額は相続開始時の価額で算定する

 

・特別受益の持ち戻し免除を主張

 

持ち戻し期間の制限は2019年民法改正で新たに明記され、相続開始前10年間に受け取った特別受益でなければ持ち戻しを拒否できます(民法第1044条第3項)。

 

また、贈与財産の評価基準時はあくまで相続開始時の価額となります。例えば、当時の価額2,000万円の建物を贈与されても、相続開始時に評価が500万円となっていたなら、500万円が基準となります。

 

そして、特別受益にあたる贈与を受けても、遺言書で特別受益の持ち戻し免除が明記されている、または黙示の免除の意思表示が認められる場合は、反論が可能です。

特別受益でトラブルが起きないようにするには

特別受益でトラブルとならないためには、被相続人の方で贈与や遺言書の内容をなるべく公平に決める必要があるでしょう。

 

以下、相続人と被相続人それぞれの注意点や相談先について取り上げます。

相続人の注意点

相続が開始されたら、相続開始前10年間に被相続人から受け取った贈与物をよく確認しましょう。

 

明らかに特別受益となる贈与があった場合は、正直に自分の方から他の相続人へ申し出た方が良いです。後日、特別受益となり得る資産を隠していた事実が発覚すれば、深刻なトラブルに発展する可能性があります。

 

また、遺産分割の際に相続人全員が合意すれば、特別受益を持ち戻ししないよう決めても問題ありません。互いの信頼関係を大切にしながら遺産分割協議ができれば、特別受益があっても円滑に話し合いを進められるはずです。

被相続人の注意点

特別受益を特定の相続人だけではなく、なるべく相続人全員に行っていたら、相続時に大きなトラブルとなる事態は避けられるはずです。

 

また、特定の相続人に特別受益となる贈与を行い、持ち戻し免除を希望するならば、必ず、忘れずに遺言書へ免除の意思表示を明記し、証拠を残しておきましょう。

 

その際に遺産の分配は、特別受益を受けなかった相続人へ多めに指定しておく配慮も大切です。

 

 

後藤 光

株式会社サステナブルスタイル 代表取締役

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