(画像はイメージです/PIXTA)

先祖代々の墓はあるけれど、子どもに継がせるには負担が大きい、あるいは、自分が亡くなれば面倒を見る人がいない…。そんな悩みをもつ方の選択肢が「墓じまい」であり、検討する人も増えています。しかし、ときにお寺や親族とのトラブルにもなりかねず、対応には注意が必要だといえます。

自分なきあとのお墓にまつわる不安を解決する「墓じまい」

最近、「墓じまい」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。墓じまいとは、先祖代々のお墓をなくし、永代供養塔に移したり、散骨したりすることです。

 

厚生労働省の「衛生行政報告例」の2019年版によると、2009年には7万2,050件だった改葬(別の場所に遺骨を移動させること)の件数は、2018年は11万5,384件に増えたということからも、最近のお墓のあり方に変化があることが見て取れます。

 

若いうちは気にもとめなかったお墓の問題ですが、自分の両親が亡くなると、一気に現実感が増してきます。自分の両親は、自分がいたから、無事に先祖代々のお墓に入れることができましたが、自分はどうでしょうか。出生率の低下を見てもわかるように、日本では少子化が加速しています。子どものない方はもちろんですが、子どもがいたとしても、遠く離れた場所の先祖代々の墓を守らせるのは、あまりにも荷が重いといえます。

 

その解決策として多くの方が選んでいるのが、この墓じまいなのです。

 

墓じまいといっても、お墓には先祖代々のお骨が入っています。これを放置してお墓を閉じることはできませんし、墓じまいをしたからといって、無造作にお骨をその辺に放置したりすれば罪に問われてしまいます。

 

したがって、法律に従ってお骨の処理を考える必要があります。その方法のひとつが永代供養墓であり、散骨です。

 

永代供養にする場合も、散骨する場合も、基本的に墓地の管理者や散骨業者から改葬許可証の提示を求められます。そのため、現在のお墓がある市区町村で、改葬許可証を発行してもらうことになりますが、あわせて受け入れ先となる墓地との調整もおこなう必要があります。

菩提寺のお墓を閉じる際には「離檀料」が必要だが…

以上は墓じまいのおおまかな手続きですが、いままで先祖代々が入っていたお墓を閉じるには、そのお墓がある寺院や公共霊園に、墓じまいする旨を伝え、しかるべき手続きを踏む必要があります。

 

その際に問題になるのが「離檀料」です。

 

先祖代々のお骨を納めてきた菩提寺のお墓をしまうため、そのお墓の檀家をやめることになりますが、これを「離檀」といいます。離檀する際、菩提寺から離檀料を請求されることがあるのです。

 

確かに墓じまいをするためには、墓石の撤去や、お墓の中から遺骨を出すなどしなければなりません。その手間にかかる経費と考えればある意味当然ですし、長年にわたり菩提寺にお世話になったことを考えれば、多少の「お布施」を包むのは最低限のマナーだといえます。

 

ところが、なかには数百万円もの金額を請求されるケースもあり、問題となっています。

 

離檀料には法的根拠がないため、法外に高い離檀料を請求された場合は断わることもできますが、支払いを拒否した人が遺骨の出骨を拒まれるなどのトラブル事例もあります。

 

こうなってしまうと、当事者同士で話し合っても埒があきませんから、弁護士や行政書士など法律を取り扱う第三者を間に挟み、話し合いをする必要があります。

お墓を地元から移すことで、親族とトラブルになるケースも

また、墓じまいが親戚間のトラブルに発展する恐れもあります。

 

最近は親戚の数も少なくなってきているとはいえ、それでも「墓じまいをされると、気軽にお墓参りに行けなくなる」といった苦情が来る場合もあります。

 

よくあるのが、お墓を継ぐ祭祀承継者が東京に住んでおり、地方にある先祖代々の墓を墓じまいして、都内の永代供養墓や納骨堂に移すなどしたときです。

 

高齢の親戚が遠く離れた東京の永代供養墓までお墓参りに来るのは、たしかに現実的ではないでしょう。しかし、お墓をどう管理していくかは、祭祀承継者の権限ですので、判断に基づいて墓じまいをしても法的な問題があるわけではありません

 

ですが、地方に多数の親戚がいる場合は、その方々の気持ちも踏まえたうえで、墓じまいのタイミング等を検討したほうが、余計なストレスを抱えないためにもいいでしょう。場合によっては、祭祀承継者の権利をほかの親戚に譲るという手もあります。

 

これらについては、親族間で話し合い、納得できる着地を探るしか方法がないでしょう。

 

せっかく先祖代々のお墓を引き継いでも、維持管理コストの問題、自分の子どもにかけてしまう負担の問題、あるいは独身で継承者がいないといった問題があるのであれば、やはり親戚一同で話し合いの機会を持ち、墓じまいを検討する必要があるかもしれません。

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