葬儀に参列…悲しみのうちにいるご遺族にかける言葉
お通夜やお葬式に参列したときには、ご遺族の方にご挨拶をする機会があると思います。
しかし、多くの人にとって「喪」の席は、慣れない場所であり、立ち居振る舞いにも戸惑いがちです。とくに、悲しみに溢れた席での挨拶では、礼を失した物言いをしてしまわないか、気がかりに感じるのではないでしょうか。
とくに昨今では核家族化が進み、昔ほどには親類・縁者の葬儀に参列する機会がなく、周囲から学ぶ機会も減っています。
大切な方を亡くしたご遺族の方々を前に、なんとお声がけをすればよいのでしょうか。
親しい間柄なら、喪主の心に寄り添うことを最優先に
まず基本として、気の利いた言葉をかけようと気負う必要も、多くの言葉を尽くす必要もないということです。あまり多くを語ろうとすると、かえって対話が不自然になりかねません。
「このたびはご愁傷様です」
「お役に立てることがあれば、何なりとおっしゃってください」
基本的には、このような言葉で十分なのです。
とはいえ、喪主の方との関係性次第では、もう少し歩み寄った言葉かけをしてもいいかもしれません。
故人や喪主の方と親しい関係にあるなら、言葉がけよりも、気持ちに寄り添って差し上げることが肝心です。
最近は、親ひとり、子ひとりといった家族構成も増えています。そのようなご家族で親御さんに先立たれたら、のこされたお子さんはどれほど寂しい思いをされるでしょうか。
もしご親戚がいない、いてもわずかという場合には、お通夜の席に喪主の方がひとりきりになってしまう場合もあります。そのようなとき、喪主の方の友人等の親しい関係にあるのなら、そっとそばに付き添って差し上げましょう。それだけで喪主の方の心の痛みはケアされるはずです。
ご遺族と接点がない場合は、故人との関係をきちんと伝えよう
また、生前の故人と親しくお付き合いをさせてもらったものの、喪主の方とはそれほど親しくない、あるいは存じ上げないというケースもあります。故人と仕事関係でお世話になった方、親しくしていただいた方は、こちらに該当するのではないでしょうか。
故人と親しくても、喪主を務められるご家族、ご親族の方と面識がないのは一般的です。しかし、だからといって、お焼香をすませたらすぐに失礼するというのも心のこりですし、なにより、あとから記帳を確認したご遺族が「この方はどういう関係の方だろう?」と頭を悩ませることにもなりかねません。
そのような事態を防ぐには、参列したときに喪主や親族の方へ「このような事情で、故人の方と親しくさせていただいておりました」と、ひとことお伝えするといいでしょう。それだけで記帳された名前と人物が一致しますし、故人の人間関係を知ることで「葬儀に参列していただけるような、よい人間関係があったのだな」と、喪主や親族の方の気持ちが慰められることにもなります。
故人の方が紡いでくれたご縁に感謝を込めて
次に、もう少し故人と遠い関係にある場合のご挨拶について考えてみましょう。たとえば、故人とは直接の関わりはないけれども、そのお子さんと勉強や仕事を通じて親しい人間関係を構築しているようなケースです。
親しい方ご本人が喪主を務めている場合は対応に迷わないと思いますが、もし、親しい方のお父様が亡くなり、喪主をお母様や、あるいは年長のごきょうだいがつとめている場合、挨拶に迷うこともあるでしょう。
そのようなときは「〇〇さんと仕事で親しくお付き合いさせていただいております」などと挨拶したうえで、亡くなった方を悼む言葉を伝えます。大切な友人・知人との出会いは、故人の方の存在があってこそのもの。出会いへの感謝の気持ちをこめて、ご挨拶させていただくのです。
注意して…悲しみの席で慎むべき話題・言葉
せっかくご挨拶させていただいても、その後の会話に配慮が欠けていたら台無しになってしまいます。
よくあるのが、亡くなった方の死因を尋ねることです。若い年齢で亡くなった場合、ご遺族の方の悲しみはひときわ深いですし、ご高齢の方であっても、闘病などのつらい経過があったかもしれず、ご遺族の方にそれらを思い起こさせる話をこちらから振るのは避けるべきです。「なぜ、亡くなられたのですか」といった、興味本位とも受け取られかねないぶしつけな質問は慎みましょう。
それ以外にも「大往生でしたね」といった決めつけや、ご遺族の方に「元気を出してください」「頑張ってください」という励ましの言葉をかけるのも、心の負担になりかねないため、避けるようにします。
「忌み言葉」にも注意しましょう。忌み言葉とは、縁起の悪さや死を連想させる言葉のこと。「死ぬ」「死亡」といった直接的な言葉もタブーであり「ご逝去」を使うようにします。また、不幸な出来事が重ならないように「重ね重ね」「くれぐれも」「再び」など重複をイメージさせる言葉は避けるといった習わしがあります。会話の際にはこれらの点にも配慮することが、故人の方、そしてご遺族の方の気持ちに寄り添ったコミュニケーションとなります。