長寿化する日本、単独世帯も増加傾向へ
厚生労働省は、2023年7月4日「2022年 国民生活基礎調査」の結果を公表しました。そこには世帯構造の構成割合の推移が記載されており、1986年以降、3年に1度の頻度で、どの世帯構造が増えているのか、あるいは減っているのかを時系列で把握できます。
世帯構造の変化として明らかなのは、「単独世帯」「夫婦のみ世帯」の増加と、「夫婦と未婚の子のみ世帯」「三世代世帯」の減少です。「夫婦のみ世帯」には、子どもを持たない若い世帯も一定数いると想定されますが、過半数を占めるのは、かつて子どもがいる核家族だったものが、その後子どもが独立し、夫婦のみの世帯となったケースです。
2022年の夫婦のみ世帯は1,333万世帯で、このうち65歳以上の者がいる夫婦のみ世帯は882万1,000世帯に達しました。この世帯はやがて夫婦のいずれかが先立ち、単独世帯へとシフトしていきます。
ちなみに2022年の単独世帯は1,785万2,000世帯で、このうち65歳以上の単独世帯は873万世帯ですが、長寿化が進む日本では、この数字もさらに増加していくでしょう。そして、この単独世帯のなかには、生涯独身のまま年齢を重ねた人も含まれています。
生涯独身のまま、あるいは結婚しても子どもをつくらないまま年老いた場合、「自分が亡くなったとき、誰が埋葬してくれるのか」という死後の問題が生じます。
核家族化で親戚付き合いが減り、生涯独身で暮らす人、子どもをもたない夫婦が増えるなかで、大きな社会問題になる恐れがあります。
身寄りのない人が亡くなると、行政が埋葬までおこなうことに
では実際に、上記に当てはまる人が、準備のないまま亡くなると、どうなってしまうのでしょうか。
まず、まったく身寄りのない方が病院で亡くなった場合は、「行旅病人及び行旅死亡人取扱法」という法律に基づき、病院から自治体に向けて連絡が行きます。これは、行旅人が病気をしたり、死亡したりした場合に、その所在地を管轄する市町村が、救護することを求めた法律です。
身寄りがあれば、まずその家族に連絡が行き、自宅で遺体を引き取ってもらうことが可能ですが、まったく身寄りのない方の場合は、原則として亡くなった地域に遺体が安置され、その後の遺体の扱いは、自治体に任せることになります。
次に、病院から連絡を受けた自治体は、亡くなった人に身寄りがないことを確認したうえで、火葬や埋葬の手続きをおこないます。これは「墓地、埋葬等に関する法律」で規定されています。
この場合、火葬や埋葬にかかった費用は、亡くなった方が遺留した金銭を充てることになっており、亡くなった方が遺留した金品は、全額市町村長に引き渡すことになります。しかし、金品がまったくないという場合は、生活保護法に基づく葬祭扶助が適用されるケースもあります。
気になる遺骨の保管先ですが、これは自治体が保有している、もしくは委託している墳墓、もしくは納骨堂に納められます。どうなるのかは自治体の判断になりますから、どこに納骨されるのかは、すべて自治体の判断に委ねられています。
「死後事務委託契約」を活用するメリット
万一の際も行政が対応してくれるとはいえ、やはり、おひとりさまとなった自分が亡くなったあとは、誰かに迷惑をかけることなく、しめやかに火葬・埋葬してもらいたいと考える方が多いのではないでしょうか。
そのような希望は「死後事務委託契約」によって実現することができます。契約内容として、関係者への連絡、葬儀や納骨の手配、病院や施設、住居の片づけや未精算分の支払い、電気・ガス・水道・電話など各種契約の解除と清算、役所の手続き等です。
問題は「この契約を誰と結ぶか」です。一般的には、親族がいればその方と締結することが考えられますが、基本的に、死後の手続きは非常に煩雑であり、なかには相続をはじめとする法的な手続きが含まれる場合もあります。
親族に極力迷惑を掛けたくないのであれば、法律の専門家である弁護士、司法書士、行政書士等の第三者に委託するのがいいでしょう。
また、死後の問題以前に、高齢化によって自分の財産の管理が覚束なくなるというケースも想定されますが、その場合には、「財産管理委任契約」を法律の専門家等と結ぶ方法があります。
この契約は、心身の状態が思わしくない場合、知人や弁護士等に財産の管理や病院、福祉サービスなどの手続きを代行してもらう契約です。成年後見制度と違うのは、判断能力の低下を前提とした契約ではないということです。頼れる身内がいない場合は、あわせて同契約について検討するのがお勧めです。