収益事業等以外は原則非課税の宗教法人。税法上「公益法人等」に分類されるためですが、なかにはこの制度を悪用する宗教法人・僧侶もいるようです。“元マルサの僧侶”という異色の経歴を持ち、『税理士の坊さんが書いた宗教法人の税務と会計入門』(国書刊行会)著者の上田二郎氏が、実際にあった「宗教法人による所得の申告漏れ事件」を紹介します。
まるで反社…4,000万円超の「お気持ち」を隠した高僧の末路
曹洞宗大本山に追徴課税千数百万円――国税指摘
国内最大級の仏教系宗教法人「曹洞宗」では、一般の僧侶らが大本山の高僧に会いに行く際、高額な「お気持ち」(献上金)を持参するのが習わしになっている。
大本山總持寺(横浜市鶴見区)のトップらが4年間で計4千数百万円の献上金を個人的に使うなどしていたところ、東京国税局から「いったん總持寺の会計に入れた上で、給料としてもらうべきだった」と指摘された。
源泉所得税の徴収漏れで、總持寺が納めた追徴税額は千数百万円。宗教界に横たわる不明朗税務の一端が浮かび上がった。(2016年2月)
国税は「貫主らへの献上金は法人の収入」と指摘し、高僧らの献上金のうち個人で使ったと判断した金額について給与と認定して源泉所得税を追徴課税しました。
一般社会ではあり得ないような行為が依然として行われているようです。もしこのような行為があった場合には、国税の指摘は当然で、コメントのしようもありません。
上田 二郎
僧侶/税理士
元国税査察官・税理士
1964年生まれ。東京都出身。83年、東京国税局採用。千葉県内および東京都内の税務署勤務を経て、88年に東京国税局査察部に配属。その後、2年間の税務署勤務があるものの、2007年に千葉県内の税務署の統括国税調査官として配属されるまでの合計17年間を、マルサの内偵調査部門で勤務した。
09年、妻の実家を継承するために東京国税局を退職したが、縁あって再び税理士として税務の世界につながっている。
著書に『マルサの視界 国税局査察部の内偵調査』(法令出版)、『国税局直轄 トクチョウの事件簿』(ダイヤモンド社)、『国税局査察部24時』(講談社現代新書)がある。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載“元マルサの僧侶”が語る!「宗教法人の税務調査」事件簿