【実例】アーセナルvsバルセロナ(21-22シーズン)
具体的にこれを実行しているのがアルテタ率いるアーセナルと、シャビ率いるバルセロナ(アラウホがサイドバックに起用されない試合)です。講義を作成したのが21-22シーズンなので、もし現在とやり方が変わっていたらご容赦ください。
アーセナルはビルドアップ時にサイドバックがペナルティーエリアの幅くらいに立ち、「2-3-5」のような陣形になります。サイドバックが「ハーフフロント」に立ち、ボールを受けたときに外側の斜め前(ウイング)にも、内側の斜め前(インサイドハーフ)にもパスを出せるようになっていることがわかると思います(図表5)。
アーセナルの特徴はインサイドハーフが高い位置を取り、ウイングをサポートできる構造になっていることです。
たとえばウイングがインサイドハーフにパスを出し、インサイドハーフがダイレクトで落とせば、ワンツーでDFラインの裏を狙うなど複数のコンビネーションが可能です。ただし、インサイドハーフがライン間に静的に立ってパスを待つことが多く、後方からのボール前進をサポートしにくいというデメリットもあります。
一方、バルセロナもサイドバックが「ハーフフロント」に立つのは同じですが、アーセナルと異なるのはサイドバックがペナ幅より少し外側くらいに立つことです。「4-1-3-2」のような陣形です。アーセナルに比べてサイドバックが外にいるので、ウイングへのパスコースが消されやすくなりますが、その分、インサイドハーフが下がってきてサポートします。
インサイドハーフが上下動するためライン間にスペースが生まれやすいのですが、その割を食うのがウイングです。周囲のサポートが乏しい中、独力でサイドを突破しなければなりません。
バルセロナの特徴は、さらにセンターフォワードも中盤に降りて縦パスを受けようとすることです。いわゆる「偽9番」ですね(図表6)。選手が自由に中央のエリアでポジションを入れ替え、それによってフリーの選手をつくろうとするサッカーです。
いずれにせよアーセナルとバルセロナはサイドバックが「ハーフフロント」に立ってパスの迂回経路をつくり、敵陣へのスムーズな侵入を実現しています。GKを頂点にした逆三角形に近い形になるので、僕は「逆三角形理論」と呼んでいます。