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夫逝去後、妻がもらえる年金は激減するという現実
田中さん（仮名）は66歳。定年退職後は、65歳の妻とともにのんびり年金生活を送っていました。田中さんは現役時代、日本各地に支店を持つメーカーの管理職で、全国を転々とするいわゆる「転勤族」でした。夫婦には子どもはなく、しっかり者の田中さんとおっとりと物静かな妻は相性がよく、いつも一緒でした。
転勤が多かったことから持ち家はなく、いま暮らしているのは田中さんが定年退職前から住んでいた賃貸マンションです。いずれは預貯金で老人ホームに入ることを予定していましたが、人生は計画通りに進みませんでした。
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奥様：先日、主人が他界しました…。心筋梗塞で突然倒れ、あっけなく逝ってしまったのです。これから私はどうやって生きていけばよいのでしょう…。
先生：田中さんご夫婦は、どちらも年金受給者でしたね。生前にいくら年金を受け取っていましたか？
奥様：夫の厚生年金が毎月17万円、私は基礎年金のみで6万6,000円でした。2人合わせて24万円くらいでした。夫の厚生年金は、私が引き続きもらえるのでしょうか？
先生：そうですね。遺族厚生年金として受け取ることができます。ただし、金額が減ってしまいますよ。
奥様：えっ、いくら減るのですか？
先生：奥様に支給される遺族厚生年金は、ご主人に支給されていた老齢厚生年金のうちの報酬比例部分の4分の3だけとなります。田中さんは毎月17万円の年金を受け取っていましたが、老齢基礎年金部分の6万6,000円を差し引くと、老齢厚生年金の部分は10万円だったわけです。その4分の3ですから、8万円くらいですね。
奥様：え――っ！ 8万円ですか!! 9万円も減ってしまうのですか!?（号泣）
先生：もちろん、それに加えてご自身の老齢基礎年金を受け取ることになりますから、合わせて毎月15万円くらいになりますね。
奥様：それでは、いま住んでいるマンションの家賃が払えません…。
★夫に先立たれてしまった妻の年金額についてはこちらをチェック！
【夫婦2人で年金“月24万円”だったが…66歳夫が先立ち激減した「年金額」、65歳妻「これからどう生きていけば」【公認会計士が解説】
いま65歳なら、あと20年以上ひとり暮らしになる可能性も
先生：それなら、貯蓄を取り崩すしかありません。死亡保険金は受け取っていませんか？
奥様：たしか、3,000万円の保険に入っていたはず…。いま手元に保険証券があるので、これを見てください。
先生：…これは定期付き終身保険ですね。最初に契約したときには死亡保障300万円の終身保険と死亡保障2,700万円の定期保険が組み合わされていたようです。しかしながら、5年前に定期保険の契約が更新されず、ストップしていたようです。現時点では300万円の終身保険しか残っていませんね。
奥様：ええっ！ 保険金は300万円しかもらえないのですか？
先生：そうですね…。仕方ありません。一般的に、女性の平均寿命は87歳だと言われています。いま65歳の奥様は、あと20年以上の長い期間をひとりで暮らしていくことになりますね。
URの賃貸住宅への入居で、すぐに家賃を節約
奥様：家賃の安い賃貸マンションに引っ越すしかないでしょうか。
先生：そうですが、ただ「高齢の女性の1人暮らし」となると、UR都市機構の物件から探すことになるかもしれません。毎月15万円の収入だと、家賃は5万円くらいが限度でしょう。保証人を誰にお願いするかが問題になりますが、URの賃貸住宅の場合、保証人は不要ですよ。
奥様：家賃5万円の支払いも厳しいです…。
先生：URの高齢者向け優良賃貸住宅、略して「高優賃」に入居する場合、家賃の減額制度があります。60歳以上の単身者で、毎月の所得が15万8,000円以下なら、20％減額してくれるのです。それなら、毎月4万円で住めますね。
奥様：高齢者向け優良賃貸住宅というのは、どういったものでしょうか？
先生：これは、家賃減額制度だけでなく、事故、急病など万一の場合に提携事業者に緊急通報するサービスが提供されるものです。高齢者向け物件なので、床段差をほとんどなくし、要所に手すりを設置し、便利で使いやすい設備を取り入れ、高齢者が安心して利用できるよう、内部が改良されています。
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医療費・介護費用が増える将来に備え、貯蓄はキープを心がけて
奥様：それはいいですね。できるだけ早く、URの賃貸住宅に移りたいと思います。家賃4万円なら、毎月の生活費として11万円使えますね。それでも赤字ですが…。
先生：今後の家計を考えてみましょうか。毎月どれくらい生活費がかかりそうですか？
奥様：食費が6万円、水道光熱費が2万円、日用雑貨1万円、スマホ代が5,000円、医療費が2万円、それ以外に5万円くらいでしょうか。家賃4万円を入れると毎月20万円くらいは必要ですね…。
奥様：今後は医療費や介護費用が増えていくはずだから、貯蓄を取り崩すわけにはいきません。大変ですが、家計を切り詰めるしかありませんね。
奥様：わかりました。節約できる固定費は節約し、必要最低限で生活するよう心掛けていきます。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト／一級ファイナンシャル・プランニング技能士／公認会計士／税理士／中小企業診断士
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