(※写真はイメージです/PIXTA)

7月27~28日に行われた金融政策決定会合で、日銀はYCCの柔軟化を決めました。金融政策が正常化に向かうことにより、銀行などの預金金利も上がるのではないかと期待する声もありますが、フィデリティ・インスティテュート首席研究員の重見吉徳氏は「日銀が利上げしても預金金利が上がることはない」と言い切ります。その根拠について、詳しくみていきましょう。。

米国が起こしたインフレは「失策」か?

主要国の実質金利は、“米国のみ”プラス

現下では、[図表2]に示すとおり、主要国のなかでは米国の実質金利のみがプラスであり、他の主要国ではマイナスであることも、米国債やドルへの投資を促していると思われます。

 

[図表2]主要国の実質5年金利
[図表2]主要国の実質5年金利

 

米国は、(世界的な財や労働の供給不足に加えて)パンデミック後の巨額の金融緩和と財政出動で大幅なインフレを起こしました。

 

たしかに、それは「失策」だったかもしれませんが、その後の(実質金利がマイナスの状態を続けるという)「財政従属」の誘惑にも負けることなく、実質金利をプラスにまで一気に引き上げました。それこそが、米国の経済成長や政府債務に対するFRBの自信の表れでしょう。

 

また、投資家にとっては、単に「米国は実質金利が高い」ということのみならず、米国に対する信頼感を回復させるものとなったでしょう。

「米中対立」がもたらす“好影響”

最後に、米中対立も、ドルや米国債への資金フローを「長持ち」させる可能性があるでしょう。

 

国際政治におけるリベラリズムの「カントの三角形」は、民主主義であること、経済の相互依存が強まること、国際機関を設立しこれに加わることで、戦争は防がれると考えます。

 

これと同様に、米国のリベラル派はとくに1980年代以降、中国との経済依存を深めることで(=関与政策)、中国がやがては(自由貿易や資本移動の自由、財産権の保護などの)資本主義と親和性の高い民主主義体制に移行することで、中国を米国の側に取り込み、ロシアを「封じ込める」ことを企図していたかもしれません。

 

他方で、(国際政治はアナーキー・無政府状態であり、常にパワーが対立していると考える)リアリズムの観点からは、上記のリベラリズムの考えに基づいて自由貿易が拡大していけば、世界経済や貿易に占める中国の規模が大きくなり、貿易による富の増大は中国の国際政治的・軍事的な地位を高めることで、準備通貨がドルから人民元に徐々に移行し、準備通貨としてのドルの地位が落ちていくことが予見されました。

 

そして、実際に、中国は米国の地位を脅かすほどに台頭しました。

 

現在の米国は(表面的には)いくぶんリアリズムに転じているようにみえ、中国の台頭を「封じ込め」ようとしているようにみえます。

 

米国以外の西側諸国にとってみると、米国の軍事支出をファンディングし、中国への軍事転用可能な技術や製品の提供を抑制することによって、安全保障を保とうとしている状況でしょう。逆に、中国の側も資本主義(≒改革開放)から社会主義(≒共同富裕)への回帰を指向しているように見えます。

 

中国の経済的・軍事的なプレゼンスの拡大が内外から抑制されることで、米国やドルの地位が保たれる可能性があります。

 

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重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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