最初に「金食い虫物件」をつかめばアウト!
こうして複数の不動産を持つことができたのは、最初に買った渋谷区のビルで収益を得ることができたからにほかなりません。収益率が高いことから価格は上がっており、売却すればキャピタルが得られる状態です。
知人に騙されるという大きな失敗もありましたが、それが活力になって3年で2,000万円の資金を作り、運良く非常に魅力のある物件に出合うことができた。機敏に動いてそのチャンスをつかむことができた、ということです。
最初の物件が肝心で、いい物件ならキャッシュフローを生む。ローンが順調に返済できるので信用力がアップする。利益が出るから自己資金も作れる。そして次の物件を買うことができる。芋づる式に物件を増やしていくことも十分に可能です。
よくない物件を買ってしまうと、赤字になって、補填のために貯蓄も減る。損切りか自己破産しかなく、ゼロまたはマイナスからやり直しです([図表1]参照)。
頭金ゼロ、かつ、ローンも組めて今すぐにでも不動産投資ができる。そんな軽い気持ちで不動産投資をすると大変なことになります。買えるものを買う、というのは大きな間違いです。
「そんなにいい物件はない」「そんなことを言っていたらいつまで経っても投資などできない」と批判されたことがありますが、なければ買わなければいいのです。
ない時は買わない。ないからといって、キャッシュフローがマイナスになるような不動産を買っても何の意味もない。ただ重い荷物を背負うことになるだけで、マイナスでしかありません。
「すべては、最初に何を買うのかで決まる」のです。
毎月黒字であることが絶対条件
価格が上がるかどうか、正確な予測はできないものの、長期的には立地などの特殊事情がない限り、日本での不動産価格は下がるとみるのが妥当でしょう。
毎月のキャッシュフローから見てみましょう。
たとえばローン返済や管理費などの諸経費を引いたあとの手残り(手元に残る額)が20万円(年間240万円)、30年で7,200万円とします。しかし1億円で買った物件が30年後には5,000万円になったとします。
頭金は2,000万円を支払い、8,000万円のローンは家賃収入から返済できています。
そのうえで、30年で7,200万円のキャッシュフローがあり、さらに物件を売却すれば5,000万円が入ってきます。
1億200万円の黒字であり、諸経費や税金を差し引いても、不動産投資としては成功です。
つまり、キャッシュフローがあれば、価格がある程度下がってもいい、ということです。家賃収入から手出しなしでローンを完済でき、キャッシュフローがプラスの状態を30年などの長期で維持できるなら、その物件は超優良物件と言えます。
対してキャッシュフローがマイナス月10万円・年間120万円という場合、30年持っていると3,600万円の赤字です。その場合、3,600万円以上に物件価格が上がらなければトータルで損、ということになります。
成長率の低い日本において、値上がりしないと利益が出ない、あるいはキャッシュフローの累積赤字を解消できない不動産はかなり問題です。
「キャッシュフローが赤字の物件=価格上昇に賭けるギャンブル」であり、かつ負けの可能性がかなり高いのです。
成長率が低く、価格上昇が見込みにくい日本においては、キャッシュフローがプラスになることがとにかく重要です。立地がいい、5年後に駅前再開発がある、何らかの事情があって価格が極端に安いなど、特殊な事情があれば価格上昇もあり得るでしょう。
そうでなければ基本的には値上がりは難しく、キャッシュフローがプラスでなければ投資する意味がない、ということになります。
滝島 一統
株式会社光文堂インターナショナル
代表