【具体例】利息制限法改正で利息の計算はどう変わる?
利息制限法を含む法改正によって、利息の計算はどのように変わったのでしょうか。いくつかの具体例を見ながら、改正後の利息について確認してみましょう。
利息の計算方法
まずは、利息を計算する基本の方法について解説します。利息の計算は
借入額×利率
で求めることが可能です。
例えば、10万円を1年間借りた場合、10万円の上限金利は年利18%のため、1年間にかかる利息の上限は18,000円となります。利息を日割りで出す場合は、18,000円を365日で割って1日あたりの利息を計算し、そこに借入期日をかけて算出するのが基本です。
この例の場合、もし1年間で18,000円を超える利息がかかった場合は、利息制限法の定めにしたがって無効とすることができます。
10万円を1年間借りて3万円の利息を徴収された場合、18,000円を超える12,000円は無効として返還請求が可能です。
利息ではなく「取引手数料」といった名目であった場合も上限金利に含まれるため、手数料も合算して上限を超えた分は無効となります。
利息の引き直し計算とは
利息の基本の計算方法とは別に「引き直し計算」についても解説します。
利息の引き直し計算とは、法改正によって上限年利が引き下げられたことにより、現在の金利で再計算することをさします。引き直し計算で上限を超えて払い過ぎた利息がある場合、消費者金融やクレジット会社などへ返還請求を行うことで、払い過ぎた利息を取り戻すことが可能です。
この手続きは「過払い金請求」と呼ばれています。
引き直し計算の具体例
利息の引き直しが発生すると思われる事例と計算方法について、具体例を参考に見ていきましょう。
例1:年利29%で150万円を借り入れていた場合
1日当たりの利息は
150万×29%÷365日=1,191円(端数切捨て)
1ヵ月30日とした場合のひと月あたりの利息は
1,191円×30日=35,730円
となります。
次に、150万円の利息を現在の上限金利で計算します。法改正により、150万円の上限金利は現在15%となっているため、1日あたりの利息は
150万円×15%÷365日=616円
1ヵ月辺りの利息は
616円×30日=18,480円
となります。
実際には毎月利息と元金も返済するため、毎月の元金合計に応じて引き直し計算を行い、完済した期間までの合計を計算します。現行の上限金利で完済を迎えた期間を超えて支払っていた場合、その期間以降の返済を無効として、過払い金請求をすることができるのです。
引き直し計算をする際の注意点として「初期に返済した額は元金返済に繰り入れられる」ことが挙げられます。
例えば、150万円を29%の金利で返済した場合の1ヵ月あたりの利息は35,730円、15%の現行金利では1ヵ月あたりの利息は18,480円です。
この差額は
35,730円−18,480円=17,250円
となりますが、この17,250円は元金の返済に充てられ、翌月は新たな元金で再計算します。
毎月5万円ずつ返済した場合、引き直し計算では
1回目
29%の場合:利息35,730円 元金返済(50,000−35,730)14,270円 元金残1,485,730円
15%の場合:利息18,480円 元金返済(50,000−18,480)31,520円 元金残1,468,480円
2回目
(引き直し前:利息35,413円 元金返済14,587 元金残1,471,143円)
引き直し後:利息(1,468,480×29%)=35,002円 元金返済14,998円 元金残1,453,482円
15%の場合:利息18,104円 元金返済31,896円 元金残1,436,584円
差額:1,453,482−1,436,584=16,898円
この16,898円が新たに元金返済分として繰り入れられ、3回目の引き直し計算が行われるという流れになります。
借り入れが1種類ではなく、別の利率で複数借り入れていた場合や返済額に変動がある場合、延滞していて遅延損害金が発生していた場合には、その分の計算も必要となるため、実際の計算はもう少し複雑となります。
正確な過払い額を知るには専用の計算ソフトを使用する方法もありますが、専門家へ相談するのがおすすめです。
いずれにしても、引き直し計算の基本方法を知ることで、自身の過去の借り入れで過払い金が発生していないかを見る一定の目安となるでしょう。