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借金や利息について調べていると「利息制限法」という言葉を耳にすることがあります。一体どのような法律で、借金や利息にどのような影響があるものなのでしょうか。本稿では、岡山県司法書士会の立山慶之司法書士監修のもと、利息制限法の概要や直近の改正点、利息の計算方法などについてわかりやすく解説します。

法改正による影響は?

利息制限法を含む法改正のポイントをいくつかピックアップして、その影響についても見ていきましょう。

 

グレーゾーン金利の撤廃

改正前の上限金利と改正後の上限金利は実は同じで、利息制限法上での上限金利に変更はありません。

 

しかし、改正前は上限金利を超える利息を提示され、金利について承知して支払った場合は無効にできないという「グレーゾーン金利」がありました。

 

グレーゾーン金利は、上限金利を定めた別の法律である「出資法」が関わってきます。改正前の出資法では、上限金利が年利29.6%と定められていましたが、改正後は利息制限法と同じ20%まで引き下げられたのです。

 

出資法改正に加えて、利息制限法で定められた15~20%の上限金利との差異について、改正後は超過分を無効とすることができるようになりました。

 

改正前

• 利息制限法の上限金利は15~20%

• 出資法の上限金利は6%

• グレーゾーン金利があった

• 一定条件下で上限を超える金利を支払った場合は無効にできない

 

改正後

• 利息制限法の上限金利は変わらず

• 出資法の上限金利を20%に引き下げ

• 20%を超えるグレーゾーン金利は事実上撤廃、超過した場合は刑事罰対象

• 15~20%の間にかかるグレーゾーン金利は超過分があれば無効、行政処分対象となる

 

遅延損害金の上限金利引き下げ

遅延損害金の上限金利に関する改正前後のポイントは以下の通りです。

 

改正前

• 遅延損害金の上限金利は元本にかかる上限金利の46倍まで

 

改正後

• 貸金業者の場合、上限金利は年利20%まで

 

なお、住宅ローンなど一部上限が14.6%となるものもあります。また、契約時に遅延損害金について特に定めていない場合は民法の規定により3%(改正前は5%)が上限となります。

 

過剰貸付、多重債務の抑制

過剰貸付や多重債務の抑制に関する法改正として「総量規制の導入」や「指定信用情報機関制度」などが新たに設けられました。

 

総量規制とは、個人に対して年収の3分の1を超える額の貸し付けを原則として行わないとする規制のことです。

 

100万円を超える借り入れをする際には、源泉徴収票などの収入を証明する書類の添付が義務付けられ、貸金業者が過去の個人の信用情報を共有できる、指定信用情報機関を設けることで、返済困難な額の借り入れや多重債務を抑制できるようになっています。

 

前章で解説した通り、債務整理に影響のある上限金利の引き下げについても、利息制限法改正によって施行されたものの1つです。

 

貸金業の適正化、ヤミ金融への罰則強化

貸金業法の改正により、純資産額の引き上げや貸金業務取扱主任者の配置の義務付け、契約書面の厳格化など、貸金業への参入や営業行為への規制も強化され、より適正な業務を行うように改正されています。

 

また、無登録営業や違法な高利での貸し付けを行うヤミ金融に対しては罰則を強化し、10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、またはその両方が科せられるようになりました。

利息制限法以外にもある! 借金に関わる法律

借り入れに対する利息について定めた法律は、利息制限法以外にもあります。上記で説明した法改正には「利息制限法」「出資法」「貸金業法」の改正内容が含まれています。この3つの法律は「貸金三法」と呼ばれており、債務整理などを検討する上で必ず知っておくべき法律です。それぞれの法律におけるポイントは以下の通りです。

 

• 利息制限法:お金の貸し借りにおける利息を制限し、上限を超えた利息を無効と定めた法律

• 出資法:上限金利を超えた利息を徴収した場合の罰則を定めた法律

• 貸金業法:貸金業を営む際、契約や取引に関する規制を定めた法律

 

グレーゾーン金利の撤廃や上限金利の引き下げなども、1つの法改正だけでなく複数の法改正を同時に施行することによって実現しています。貸金三法で定めていた利息に関する矛盾などが、2006年の法改正によって解消した形です。

 

また、2006年の法改正では、遅延損害金の利率について定めた民法419条など、借金に関わる民法の改正も行われています。

 

利息制限法で罰則を設けていない行為でも、出資法や貸金業法に抵触していれば罰則の対象となります。借り入れをする債務者は、一部の民法と貸金三法によって多重債務や高利の貸し付けから守られているといえるでしょう。

次ページ【具体例】利息制限法改正で利息の計算はどう変わる?

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