(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。2023年7月のマーケットを振り返り、「1. 概観、2. 景気動向、3. 金融政策、4. 債券、5. 企業業績と株式、6. 為替、7. リート、8. まとめ」のそれぞれについて解説します。

8.まとめ

【債券】

米国の長期金利は、緩やかに低下する展開を予想します。堅調な雇用による景気の底堅さからFRBの金融引き締めが当面続くものの、利上げは最終段階に近づいていると考えられます。先行きは景気減速とインフレの低下が見込まれるため、レンジ内でもみ合いながら小幅に低下するとみています。欧州の長期金利も、インフレ圧力からECBが金融引き締めを続けるものの、利上げサイクルが米国同様終盤に差し掛かっているとみられ、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。日本の長期金利は、日銀のYCC修正により、0.5%を上回る水準が容認されたため、やや上昇すると予想しています。

 

【株式】

S&P500種指数採用企業の増益率(純利益ベース)は4-6月期が前年同期比▲6.4%(除くエネルギーセクターで同▲0.3%)ですが、7-9月以降は増益転換が予想されています(7月28日。リフィニティブ集計)。7-9月以降の見通しを先月と比べると、全体では小幅な下方修正ですが、除くエネルギーセクターベースではむしろ小幅な上方修正となっています。一方、TOPIX採用企業の23年4-6月期の純利益は前年同期比+42.5%と予想されており、好調を維持しそうです(8月1日。3月期決算企業で除く金融、QUICK集計)。

 

米国株式市場は、底堅い経済指標が続くことやインフレ率が鈍化する基調にあることなどを受けて、景気敏感業種へとやや広がりを見せながら緩やかな上昇が継続すると思われます。ただ、利下げまでの時間的な距離は遠く、景気後退懸念も払拭されたわけではないため、変動率が大きくなる可能性があります。一方、日本株式市場は引き続き高値警戒感が燻ることで上値の重い場面も想定されます。その後は、総じて堅調なマクロ指標と企業業績、日銀がYCCを修正したものの、金融緩和政策は維持される見通しとなったことなどを背景に、再び堅調な展開に戻ると期待されます。

 

【為替】

円の対米ドルレートは、FRBの利上げが最終段階に入りつつあるとみられることから、もみ合いながら緩やかに上昇する展開を予想します。先行きは米国の景気とインフレが鈍化するため、FRBによる利下げが意識され、米長期金利の低下に伴う日米金利差の縮小を背景に、円が小幅に上昇すると想定しています。円の対ユーロレートも、レンジ内でもみ合いながら小幅に上昇すると予想します。ECBの利上げサイクルは、米国同様に終盤にあるとみられることから、先行きの欧州金利の低下による金利差縮小が円の買い材料となるとみています。また、円の対豪ドルレートも、小幅に上昇する展開を予想しています。中国経済の減速により豪州景気や資源価格が抑制されるとみられ、豪ドルは対米ドルでレンジ内でもみ合うとみているためです。

 

【リート】

米国リート市場は、FRBの利上げが最終局面に近いとみられるなか、米国経済が底堅く推移する見込みであることから、緩やかに上昇するとみています。ただし、FRBの金融引き締め長期化や商業用不動産に対する融資厳格化などが警戒されるため、当面振れの大きい動きになることが見込まれます。欧州リート市場は、ECBによる金融引き締めの継続やウクライナ情勢の影響から当面上値の重い展開を想定します。日本リート市場は、景気回復の動きが続くなか、日銀の金融政策の不透明感か後退したことから上昇するとみています。アジア・オセアニアリート市場は、景気回復に伴いシンガポール中心に緩やかに上昇するとみています。

 

(2023年8月2日)

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【データ解析】日本株式市場は再び「堅調な展開」に戻ると期待される。7月のマーケット振り返り(三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジストが解説)』を参照)。

 

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