そもそも贈与税がかからない贈与
両親や祖父母が、子供や孫のために日常生活で支払う生活費や教育費は贈与にはならないので、贈与税の心配をする必要はありません。
たとえば、私立の小学校へ通わせたり、海外留学に行かせたり、習い事のために高額な楽器を購入したりすると多くの費用がかかることになりますが、それは贈与とはみなされません。
ただし、将来にかかる学費や生活費を前もって贈与する場合には、贈与税がかかります。将来にかかる教育費や生活費を贈与してもらう場合は、先述した「教育資金の一括贈与」「結婚・子育て資金の一括贈与」を利用すると、非課税の贈与が可能になります。
生前贈与をするメリット
ここでは、生前贈与をするメリットについて説明します。
相続財産を圧縮できる
相続財産を圧縮することにより、相続税を圧縮することができます。そのため、相続税をなるべく減らしたい場合には、生前贈与が効果的です。
たとえば、孫が4人いると仮定して、暦年贈与を100万円ずつ10年間行えば、4,000万円分の財産を非課税で贈与できます。
暦年贈与を利用する際は、早く始めるほど効果があるので計画的に始めるといいでしょう。
贈与者の意思で資産を引き継げる
相続が発生したら、相続したくない法定相続人がいたとしても相続しなくてはいけません。遺言書を書いていたとしても、遺留分は侵害できないからです。しかし、生前贈与の場合は、贈与者の意思で財産を引き継ぐ人を決められます。
たとえば、介護でお世話になった親族に多めに相続したい場合などは、非課税枠を利用しながら生前贈与すると、贈与者の希望に叶った相続ができます。
生前贈与をする際の注意点
生前贈与をする際の注意点についても説明します。
法定相続人間で不公平が生まれる可能性が
法定相続人のなかで生前贈与が多い人がいると、相続発生後に不公平感から親族間に亀裂が生まれる可能性があります。特に、被相続人が遺言書を残さずに死去すると、法定相続人間で遺産分割協議をすることになりますが、そこで言い争いになることが想像できます。
特定の人に生前贈与をする場合には、贈与者からなぜそのような贈与を行うかを他の法定相続人へ説明してもらうとよいでしょう。
また、自分が亡きあとに親族間で亀裂が発生してほしくないのであれば、生前贈与をしていない法定相続人には相続時の相続割合を多くするなど、他の法定相続人が納得する遺言書を作成して調整するのもいいかもしれません。
死亡前3年間の贈与は相続税の計算に加算される
暦年贈与を利用すると、年間110万円まで非課税で贈与できますが、被相続人の死亡前3年間の相続に関しては、相続税の計算に加算されます。非課税で贈与を受けたはずが、被相続人の死亡時期によっては、それが適用されないこともあります。このような事情もあるので、生前贈与をする場合は、なるべく早い段階から計画的に始めるのがおすすめです。