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被相続人となる人が所有する財産が多いと、相続税が発生する可能性があります。特に不動産などを現物で引き継ぐ場合には、自分の預貯金から相続税を支払う必要があるので、法定相続人の負担がかかることもあるでしょう。基本的に相続が発生してから相続税の対策はできません。しかし、生前であれば相続財産を圧縮して相続税を減らす対策ができます。本稿では、税理士法人ブライト相続の天満亮氏監修のもと、非課税で贈与する方法、生前贈与をするメリット・注意点、非課税で贈与するための申告方法について解説します。

3.住宅取得資金等の贈与

直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与で、受贈者が住むための家屋の新築、取得または増改築等のための住宅取得等資金を得た場合、一定の条件を満たせば非課税で贈与を受けられます。

 

非課税の限度額は、省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までです。

 

特例を受けるための要件は、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であること(成人年齢変更のため令和4年4月1日以降)や、贈与を受けた年の年分の所得税にかかる合計所得金額が2,000万円以下(新築等をする住宅用の家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、1,000万円以下)であることなどがあります。複数の要件をすべて満たす必要があるため、詳しくは国税庁のホームページをご確認ください。

 

4.教育資金の一括贈与

30歳未満の受贈者が、教育資金に充てるための資金を信託銀行など金融機関との契約に基づき、受贈者の直系尊属(父母や祖父母など)から信託受益権を取得した場合、1,500万円までは非課税で贈与を受けられます。この制度は、暦年贈与と併用可能です。

 

教育資金として利用できる費用としては、入学金・授業料・入園料・保育料などのほかにもスポーツや芸術など習い事にかかる費用も対象です。ただし、習い事にかかる費用の非課税上限は500万円なので注意しましょう。

 

また、贈与を受ける年の前年における受贈者の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、この制度を利用できません。

 

5.結婚・子育て資金の一括贈与

18歳以上50歳未満の贈与者が、直系尊属から結婚・子育てに充てる資金を一括で受け取る場合も、信託銀行など金融機関との契約に基づき、1,000万円(結婚資金としては300万円が限度)まで非課税で贈与を受けられます。なお、この制度も暦年贈与と併用が可能です。ただし、贈与があった日の前年合計所得金額が1,000万円以下であることが条件です。

 

結婚費用としては、挙式費用・転居費用・家賃などに利用できます。子育て費用としては、妊婦検診・不妊治療・出産費用などに利用可能です。

 

結婚・子育てに関する支払いが発生したごとにレシートや領収書などを金融機関に提出して資金を受け取る手続きをします。

 

6.障害者への贈与

特別障害者(重度知的障害や複雑な介護が必要など重度の障害)へ贈与は6,000万円まで、特別障害者以外の特定障害者の方については3,000万円まで非課税で贈与できます。贈与財産の使い道は、生活費および医療費に限られます。

 

7.相続税精算課税制度

贈与をする年の1月1日において60歳以上である贈与者が、18歳以上の子または孫に対し、財産を生前贈与した場合に2,500万円まで非課税で贈与できる制度です。ただし、相続発生時に相続税を支払う必要があるので、税金の支払いを先払いにすることはできますが、節税できるとは必ずしも言い切れない制度であることに注意しましょう。

 

たとえば、不動産など将来的に値上がりしそうな財産を保有している場合、贈与時の価格で相続税が計算されるのが大きなメリットです。相続税精算課税制度を利用して贈与したときの住宅価格が2,500万円で相続発生時に5,000万円になっていても、贈与時の2,500万円で相続税を計算します。

 

一方、相続時の価格で相続税が計算されるので、価値が下がった場合には通常より多くの税金を支払う可能性があるのはデメリットです。また、相続税精算課税制度を利用すると、それ以降、暦年贈与を利用できなくなるので注意しましょう。

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