(※画像はイメージです/PIXTA)

医学部受験では、最終模試で偏差値70を出したのに「全落ち」する人もいれば、最終模試で偏差値50台を出していても合格する人もいます。医学部医学科卒の綿谷もも氏は、在学中の6年間、「医学生講師」として医学部受験生を指導していました。その経験から、模試の成績と合否が一致しない理由として、「試験本番のパフォーマンス力の違い」を挙げています。パフォーマンス力とは何か? 綿谷氏の著書『医学部受験バイブル 現役医大生からの贈り物』(監修:高梨裕介氏)より一部を抜粋し、具体的に見ていきましょう。

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パフォーマンス力の違い=「試験の解き方」の違い

医学部予備校エースアカデミーの卒業生にヒアリングをしていくと、本番に強い人と本番に弱い人では「試験の解き方」が決定的に異なることが判明しました。

 

わたしたちは、本番に強い人はどのように試験を解いているか、逆に本番に弱い人が起こしてしまいやすい失敗は何かを分析し、「正しい試験の解き方」をマニュアル化しています。

 

「試験の解き方」の指導を行うようになったところ、同じ成績帯からの医学部合格率が大きく向上し、偏差値50台からの医学部合格者が多数見られるようになりました。

 

これから、パフォーマンスを左右する試験の解き方について説明していきます。

試験本番で失敗する人々は「実力以上の力」を出そうとしがち

本番に弱い人(=本番で実力が出し切れない人)の失敗原因を分析してみると、共通点が見えてきます。

 

よくある失敗例は、

 

●時間を意識せず夢中で解いた結果、想像以上に時間が過ぎていて、解けるはずの問題に手が回らなかった

●緊張で焦ってしまい、普段はしないようなミスを連発してしまった

●難しい問題を解こうとして全く方針が立たず、頭が真っ白になってしまった

 

というものです。

 

試験本番の失敗の共通点は、本番で全問題解こうとする、いい点を取ろうとするなど、実力以上の力を出そうとしている時に起こります。

 

「試験でいい点数を取りたい!」という気持ちは当然のことであり、多くの受験生が思っているはずです。

 

しかし、試験でいい点数を取ろうとするのは、自分で自分にプレッシャーをかけることになり、完全に逆効果となります。

 

中には試験で120%力を出そうとしている人もいるのですが、普段の勉強や模試でできないことが、本番でいきなりできるようになるはずがありません。

 

本番で安定して実力を発揮するために最も重要なことは、得点すべき問題を確実に解くことです。

 

試験本番はいい点数を取ろうとせず、いつも通り淡々と解いて焦りを防ぐことで、結果的にいい点数に繋がります。

本番に強い人々は「失敗する確率を減らす」を基本方針に解く

本番に弱い人に共通点があるのと同じく、本番に強い人にも共通点があります。

 

本番に強い人の解き方のベースにある重要な考え方は、「とにかく失敗するリスクを減らす」というものです。成功する確率を上げようとしているのではなく、失敗する確率を減らそうと考えているということですね。

 

「成功する確率を上げたい!」と考えるのは受験生として当然の心理ではあるのですが、それが仇となって失敗に繋がることは少なくありません。

 

先ほど本番に弱い人の共通点に出てきた通り、実力以上の力を発揮しようとした結果、プレッシャーが倍増したり、パニックを起こしやすくなってしまいます。

 

試験で(結果的に)いい点数を取るためには、失敗するリスクを最小限にすることを目標にするとよいでしょう。それでは、具体的に3つの例を挙げて紹介します。

①時間配分を意識し、解くべき問題から着実に解く

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【失敗例】

大問1の問題を解くのに集中した結果、大問1が終わったときに試験時間の半分が過ぎてしまっていた。試験時間が残り少ないことに焦ってしまい、そのあとミスを連発してしまった。

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こうした失敗の原因は、時間配分を考えずに問題を解いていることです。

 

問題の中には、場合分けが多い・計算過程が煩雑になる等、解答を出すまでに非常に時間のかかるものもあります。そういった問題にのめり込んで解いてしまうと、失敗するリスクは上がります。

 

特定の問題に時間を使ってしまうと、「時間があれば解けるはずの問題に手をつけられなかった」「あと少しで解けた問題があったのに、時間切れになってしまった」という状況を招きやすく、得点できる問題を取りこぼしてしまいます。

 

試験を解く時は事前に時間配分を考えておき、配分された時間を超えそうな問題は一旦飛ばすことが大切です。解くべき問題を解いた後で、時間がかかりそうな問題や解法に自信がない問題に戻ってくるのがよいでしょう。

②検算や確認を徹底し、ケアレスミスを防ぐ

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【失敗例】

試験本番の緊張から、普段はしないようなケアレスミスを連発してしまった。模試では大丈夫だったのに、本番でマークをずらして記入してしまった。

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医学部受験はミスが許されない試験であり、ケアレスミスをなくすことは成績を伸ばすことと同じくらい重要です。

 

得点開示をしてみると、「ほんの数点だけ合格者最低点を下回っていた」という受験生は毎年大変多いです。医学部受験は、「ほんの数点」で合否が分かれる厳しい戦いだと言えます。

 

もし、各科目でケアレスミスが1つずつでもあると、合計10点以上の差になります。ケアレスミスの有無は合否に直接影響するほど重要事項なのです。

 

試験の出来が良くないことをケアレスミスのせいにして、「ケアレスミスがなければ受かっていた」と言い訳をしている人は、早めに認識を改めておきましょう。

 

■ケアレスミスが多い原因は「解き方」にアリ。だから「注意する」だけでは減らない

「ミスがなければ点数が取れる」と思っている受験生もいますが、受験本番でだけ急にミスがなくなるなんてことはありえません。

 

ただでさえ試験本番は緊張するため、普段からケアレスミスをしやすい人は入試になるとさらにミスが増える可能性があります。ケアレスミスを軽く見ず、解き方から見直していくことが大切です。

 

注意点として、「ミスを減らすように気をつける」という心がけだけではミスはなくなりません。

 

ケアレスミスが多い原因は、不注意な性格等の問題ではなく、ミスを誘発するような解き方をしているからです。

 

例を挙げると、

 

●条件の見落とし→問題文を読むのが雑

●計算ミス→暗算が多い

●マークずれ→マークをした後確認する習慣がない

 

などがあります。

 

ケアレスミスが少ない人には、「ミスをしない工夫」をする習慣があります。例えば、「問題文の条件の見落としがないか確認すること」「自分が解いた計算過程にミスがないか検算すること」等です。

 

一見当たり前のことではありますが、ミスが多い受験生ほど手を抜いている印象です。ケアレスミスを防ぐために、試験中はこまめに検算・確認を行う習慣を作るとよいでしょう。

③本番の判断力を鍛える

試験本番、すべてが想定通りに進むことはありません。

 

「急に試験の傾向が変わった」「得意科目で大失敗してしまった」など、予期せぬ出来事が起こることはよくあります。

 

受験生の話を聞いていても、試験本番すべてが順調に進んだ人はほとんどおらず、大抵は何らかのハプニングやアクシデントを経験するようです。

 

そんな時、最も大事なのが、状況を冷静に捉えてどうすべきかその場で判断することです。試験本番は誰からのアドバイスももらうことができないため、自分で判断する力を養う必要があります。

 

試験本番の判断力は、模試や過去問演習で鍛えることが可能です。

 

あまり意識していなくても、模試や過去問演習でも予期せぬ出来事は起こっているはずです。例えば、大問1の問題が序盤から解けなくて、焦った経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。

 

試験を終えたら、試験中の自分の判断が正しかったかを振り返ってみましょう。

 

「この問題で粘らず、次の問題に進んだ方がよかったな」「数学の大問1が解けなくて焦ったけど、単純に問題の難易度が高かっただけだったな」といった具合です。

 

後から振り返ってみると、試験中の自分の判断が間違っていたと気づくことがあります。

 

判断が間違っていると気づいた場合は、「同じような事態が起こった場合、本番はどのように対処しようか」という点を考え、改善策を本番に活かしましょう。

 

 

【執筆】綿谷 もも

医学部医学科卒。数学が大の苦手で、高3の冬に受けた模試では偏差値39を取ってしまうほど。エースアカデミーで1年間浪人し、センター試験本番で90%以上を達成、関東の難関国立医学部、難関私立医学部に合格。

医学部入学後はエースアカデミーの医学生講師として6年間受験生を指導し300人以上の医学部合格に貢献。その経験をもとに、医学部在学中に書籍『医学部受験バイブル 現役医大生からの贈り物』を執筆、出版。将来の夢は小児科医。アイドルと猫が好き。

 

【監修】高梨 裕介

医学部予備校エースアカデミー 塾長、医師

医師/大阪医科大学卒、初期研修修了後に創業。

中学受験経験(灘、東大寺、洛南、洛星中学に合格)。

自身の医学部受験の反省を活かし、350名以上の医学部合格者を指導。医学部合格のためのよりよい指導をより安く提供することを理念としてエースアカデミーを設立。

 

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※本連載は、綿谷もも著・高梨裕介監修の書籍『医学部受験バイブル 現役医大生からの贈り物』(幻冬舎ルネッサンス)より一部を抜粋し、記事化したものです。

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綿谷 もも(著)
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