死後事務委任契約によるトラブルの事例
死後事務委任契約を締結しても、ケースによってはトラブルとなってしまう場合があります。こちらでは2つのトラブル事例を取り上げます。
死後事務委任契約自体の有効性が争われた
法律では委任者が死亡すると、委任の終了事由になると定める規定があります(民法第653条1号)。そのため、死後事務を実行しようとする受任者に対し、委任者の相続人が契約の有効性を疑い、裁判で争われた事例があります(最高裁平成4年9月22日判決)。
この有効性に関して、委任者の死亡を委任の終了事由と定める民法の規定があっても、ただちに委任契約が終了するわけではない、という裁判所の判断が下りました。
ただし、委任契約の有効性に関するトラブルを避けるため、「委任者が死亡しても、本委任契約は終了しない。」と契約書に明記した方が無難です。
契約を解約したら預託金の一部しか戻らなかった
死後事務委任契約を事業者と契約し、後に解約したが預託金(預けたお金)の一部しか戻らなかった、というケースも報告されています。
独立行政法人国民生活センターでは「身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意」にて、預託金トラブルの事例をホームページで掲載し、注意を喚起しています。他に、預託金の詳細な説明がなく支払いだけを急かされている、等のトラブルも報告されています。
そのため、必ず契約前に担当者から預託金等の返還の有無を確認し「内容をはぐらかす」「明確な返答がない」といった場合、契約を拒否した方が良いでしょう。
おひとりさまが死後事務委任契約を活用する際の注意点
こちらでは死後事務委任契約に関する注意点や、相談先について解説しましょう。
死後事務委任契約に関する注意点
死後事務委任契約は自分の判断能力があるうちに、詳細な契約内容を決める必要があるので、認知症となってからでは契約は非常に難しくなります。
また、契約を締結したのに、受任者が遊興費へ使うため、勝手に自分(委任者)の預金を引き出したというトラブルも考えられます。そのため、特に親戚や友人・知人へ受任者をお願いする場合は、責任感があり最も信頼できる人を選びましょう。
株式会社サステナブルスタイル 代表取締役
後藤 光