本記事のポイント
・NYダウ記録的連騰の背景
・景気後退の懸念が薄らぎ株高の流れが強まっている
・日銀のYCC柔軟化が些細な材料に思える理由
NYダウ、記録的13連騰の背景
NYダウ平均の連騰記録は13でストップした。仮に14連騰となっていたら1897年以来、126年ぶりの記録だったという。ダウの構成銘柄数が現在の30銘柄になって以降、14連騰はない。13連騰だけでも、十分にすごい。1987年以来36年ぶりの記録だ。1987年といえば、その年の秋にブラックマンデーがあった年。僕が証券界にデビューした年である。
ダウ平均がここまで強い背景には米国経済のソフトランディング期待がある。一時は米国景気のリセッション入りは不可避、との見方が大勢を占めたが、現在では景気後退懸念はかなり下火になっている。
年後半の景気後退入りはなく、来年前半にあったとしても非常に「谷」の浅いマイルドなものになるだろうとの見方がコンセンサスではないか。その理由は労働市場の堅調さとインフレの伸び鈍化によるFRBの利上げ停止観測だ。
失業率は半世紀ぶりの低さにあり、雇用者数は堅調な伸びを続けている。それでも労働参加率はコロナ禍前の水準にまで戻っておらず、構造的な人手不足の状態が続いている。したがって賃金も上昇している。充分な職と賃金上昇があれば消費が落ち込むことはない。エネルギー価格の低下も家計に恩恵をもたらしている。
こうしたことから民間調査会社コンファレンスボードが発表した7月の消費者信頼感指数は117と、前の月から6.9ポイント上昇した。市場予想を上回り、2年ぶりの高い水準となっている。現状を示す指数のほか、先行きを示す期待指数も前の月から上昇した。
一方、物価上昇率は鈍化が鮮明だ。6月の消費者物価指数の上昇率は前年同月比+3.0%と5月の4.0%から低下し、2021年3月以来約2年ぶりの小幅な伸びとなった。これを受けてFRBの利上げも7月で最後になるだろうとの見方が台頭している。
今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)は2会合ぶりの利上げを決めた。FOMC後の会見で、パウエル議長は今後の利上げについて「すべてデータ次第」と述べるにとどめた。無論、「利上げ打ち止め宣言」が出るなどとは誰も期待していない。年内にあと1回利上げがあっても、それもまた誰も驚かない。上述のとおり、米国景気は強いのだから。
しかし、インフレも沈静化してきたことから、いずれにせよFRBの利上げは最終局面にあるという認識である。
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