7―長期的な下押し圧力のなか、運営力強化と投資対象の選別が求められる
コロナ禍は商業施設に多大な影響を及ぼし、1990年代後半から続く、商業施設の売上環境の低迷に拍車をかけた。
今後、コロナ禍が収束に向かったとしても、少子高齢化とEC市場拡大の影響が本格化することで、下押し圧力が継続もしくは強まっていく。商業施設売上高は、2019年を100とすると、2030年に87.5~94.3、2040年に77.3~85.8となる見通しだ。売上全体のパイが縮小することで、商業施設間の競争が激しくなると予想される。
コロナ禍による消費行動の変容の影響は依然不透明だが、今後20年という時間軸で見た場合、少子高齢化とEC市場拡大の方が、商業施設の売上環境により大きな影響を及ぼすことになる。また、ポストコロナの消費者像によっては、特定の品目や業態においてその影響が顕在化する可能性があり、商業施設の運営力が一層問われることになる。
少子高齢化とEC市場拡大は不可逆的な変化であり、緩やかに長く続くことが特徴であることから、商業施設売上高の下押し圧力は年々強まる。商業施設への投資においても、経済・投資環境の緻密な分析や、柔軟かつ大胆なアロケーション変更を行う運営力に加えて、投資対象の選別が一段と求められることになりそうだ。