1.はじめに
米国の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で総合指数の低下基調が持続しているほか、年初から横這い推移となっていた物価の基調を示すコア指数も6月は明確に低下し、物価上昇圧力の緩和を示した。
6月はエネルギーや食料品価格の低下基調が持続しているほか、3月以降反発がみられたコア財価格が低下したほか、コアサービス価格が依然として高い伸びを維持しているものの、4ヵ月連続で低下するなどピークアウトした可能性が示唆されている。
本稿では6月のCPIの動向を確認した後、その他の物価関連指標の動向を参照しつつ今後のCPI見通しについて論じた。
結論から言えば、ウクライナ侵攻に伴うエネルギーや食料品価格の高騰が回避される前提で総合指数の低下基調が持続するとみられる一方、コア指数については住居費の低下もあって低下基調は持続するものの、労働需給の逼迫を背景とした賃金上昇圧力が燻っていることから、当面はFRBの物価目標(2%)を大幅に上回る状況が続くとみられる。
今後のコアインフレの低下スピードは賃金動向が鍵となろう。
2.米国のCPI等の動向
(6月CPIの振り返り)物価の基調を示すコア指数が明確に低下
消費者物価(CPI)は総合指数が23年6月の前年同月比で+3.0%となり、およそ40年半ぶりの水準となった22年6月の+9.1%から大幅に低下し、21年3月以来の水準となった。
また、物価の基調を示すエネルギーと食料品を除いたコア指数は年初から5%台半ばで横這い推移が続いていたが、6月は+4.8%と前月の+5.3%から▲0.5%ポイントと大幅に低下し、こちらは21年10月以来の水準となるなど明確な低下を示した。
実際に、コア指数の期間別の伸び率をみると、前月比年率が+1.9%(前月:+5.4%)と前月から▲3.5%ポイント低下し、21年2月以来の水準となるなど、6月は低下スピードが大幅に加速したことが分かる(図表2)。
一方、23年6月のCPI(前年同月比)の内訳をみると、エネルギー価格が▲16.7%と22年6月に+41.6%となった反動もあって、大幅に物価を押し下げた(図表3)。
食料品価格も+5.7%と依然として高水準ではあるものの、22年8月の+11.4%をピークに低下基調が持続している。また、コア指数のうちコア財価格は23年2月の+1.0%から5月の+2.0%まで小幅な反発がみられていたが、+1.3%と4ヵ月ぶりに低下した。
最後にコアサービス価格は+6.2%と依然として高水準となっているものの、23年2月の+7.3%から4ヵ月連続で低下し、22年8月以来の水準となるなど、ピークアウトした可能性を示唆している。
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